こうして僕らは、夢を見る
「司くん!?」
鏡と向き合っていた桜子が一瞬にしてこちらに顔を向けた。
な、なに?怖いんだけど。
て言うかスプレーをこっちに向けないで欲しい。少し力めば霧が私に掛かる。高いんだからね?このドレス。
「蕾ッ!司くん達とご飯食べに行ったの!?」
「そ、そうだけど‥‥。」
「‥‥‥はぁ〜、」
ため息をついた桜子はやれやれ、と言った風に肩を竦める。
「翔君といい司くん達といい―――――――何て羨ましい子なの」
はあ、と再び態とらしく溜め息を付かれた。
まず何で翔なの?分かんないけどどうやら人気者らしい。良かったね?この店の女の子は翔ファンでいっぱいだよ。
それに司くん達とは、ただ――――――――‥‥
「ご飯を食べただけだよ。」
「それが羨ましいの!あんな美少年達に囲まれるアンタは何様なのよ!?」
「なら今度は桜子も来る?」
「いいえ。遠慮しておくわ。美少年に囲まれて食べるディナーは味がしないから。」
何じゃそりゃ。
当たり前のように言ってのける桜子に呆れた。見る分には良いけど関わる分には要らないって感じ?うわ、面倒臭い。
だいたい司くん司くん言ってるけど本当に興味あるのか不明。ただの興味心から?
近場でPV撮影しているアイドルを見たさに騒ぐ女の子。だけど決してファンではない。ただ生でアイドルだから見たいだけ。
みたいな?
「桜子年上キラーじゃん。」
「イケメンはステータスよ。」
出たよ、この台詞。
面食いもほどほどにしようか桜子さん。
でも生アイドル見たさに騒いでいる子と同じなんだと分かった。
「でも会ってみたいわね。写真でオーラが分かるくらいだから生で見ると貫禄ありそうね。」
「特に司くんは凄いよ。」
思い浮かべてると色んな意味で凄いよ、司くん。
今日、ファミレスに行ったときに私の頼んだ唐揚げを摘まもうとした楓君の手にナイフ突き刺した。間一髪で避けた楓君も凄いけど。手に刺さる筈だった銀色のナイフは深々とテーブルに突き刺さり、ホラーだった。
訪れた沈黙が苦しかったな。
楓君なんて顔色悪すぎだし。他の5人も硬直してた。あの空気のなかで1人ニコニコと笑う司くんが恐怖以外の何者でも無かったよ。