こうして僕らは、夢を見る
ヒールを脱ぎ捨てているため裸足のままブラブラと宙で足を前後に揺らす。素足にクーラーのヒンヤリとした風が当たって気持ちいい。爪には夏らしいターコイズブルーの色をしたペディキュア。



ああ神様。私にもサマーバケーションを下さい。ひとときの安らぎをお恵み下さい。



爪に塗られたターコイズブルーを見ていると海に行きたくなった。人魚になって優雅に海を泳ぎたい。でも神様は私に味方してくれない。



今年の【サマーバケーション】は昨年同様【去らばバケーション】に成る事間違いなし。



気怠い気分になっていると――――‥‥不意に。








ブーブー


マナーモードに設定された携帯がメールの受信を知らせた。





「あ、メール。」





ブーブー


白い鞄の中から聞こえるバイブレーション。それに気づいた私は鞄の中に手を入れ携帯を探り出す。



お。あったあった。



手探りで鞄の中から携帯を取り出すと【新着1件】と画面に表示されている受信メールを開けた。





「え、」





司くん‥‥?



メール内容を二度見しては送信者を二度見した。画面には驚愕の内容が書かれていた。





「試合、か。」





【練習試合、見に来ませんか?】





携帯を握り締め文字を凝視する。試合・仕合・シアイ・SHIAI――――――どうしよう。徐々に携帯を持つ手に力が籠る。究極の選択だ。選択肢はyesかnoのみ。2択しかない。


試合って言っても練習試合。公式試合ではない。だから気を張らない司くん達は気楽に私に話し掛けて来れる。和気藹々だ。


だが、しかし!


見すぼらしい私なんかが美形集団な司くん達が話し掛られるなんて睨まれる事は確実だ。


君達の同級生の女の子達に睨まれちゃうよ、お姉さん。






どうする。どうするワタシ。


手持ちのライフラインは3つ



1.仮病
2.用事
3.危篤



うん。三つ目は却下ね。



まず可笑しいでしょ。誰が危篤になるの。もしやワタシ?――――――――いやいやいや。元気すぎるくらい元気だから。最強無敵のパワフルガールだもん。



冗談抜きで、ホントにどうしよ。



う〜ん。


う〜ん。


う〜ん。





「行きましょうよ。」

「う〜ん。」





ってちょっと待て。


メール画面から、携帯を除き混んでくる桜子に視線を移す。





「何で桜子まで来るのさ。」

「やだあ!私と蕾の仲じゃない!若い子はオアシスよ?」





何なんだコイツは。



キャピキャピと女子高生みたいなオーラを放つ桜子にドン引き。

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