こうして僕らは、夢を見る
「ね?行きましょう?」
「何で桜子が乗り気なの。だって試合は光陽高校だよ?」
「‥‥‥まじ?」
「うん。」
メールの本文には光陽高校と書かれている。=(イコール)母校。一番私が気にかかるのは場所。
光陽高校ではなく近場のテニスコートとかだったら、すんなり行ってたかもしれない。行きたいけど【光陽】が邪魔をする。
桜子も嫌がると思った―――――――が、意外な反応が返ってきた。それも呆れるほどウザい返答。興奮してきたのかペラペラと桜子は1人で話し出した。
「きゃあ!まだ光陽に笹室先生居るかしら?ねえ、居ると思う?」
「さあ。」
「や〜ん!どうしよう!笹室先生居たらどうしよう!蕾は笹室先生のこと覚えてる!?」
「さあ。」
「もうっ!ちゃんと覚えてなさいよ!笹室先生って言えば数学教師だった人じゃない!それに、私が長年片想いしていた先生なの…
――――――――きゃあ!教師と生徒の恋なんて素敵ぃ!何ひとつ想いを伝えられなかったけど淡い青春時代だったわ!もう薔薇色の毎日よ!ほら。私って笹室先生にだけは奥手だったじゃない?隠れて少し見れるだけで幸せになれたの。教師と生徒の禁断の恋にはスリルがあるのに一途に先生を想い続ける私は何て健気なの……っ」
ケッ(°∀ゝ°)
「ねえ蕾もそう思わな――――――――何よ、その顔。」
「べェつゥにィ〜?」
「何なのよ!嫉妬!?」
阿呆か。
どこに嫉妬する場面があるのやら。
桜子の淡い恋は桃色片想いのまま終わったのに。それにどこが健気だ。寧ろバリバリの肉食系だよ。
昼休みになる度に笹室先生の所に押し掛けていたの覚えてる。手作りクッキーでハートを鷲掴み!とか言って【家庭的な女アピール】してたよね?アンタは健気な少女よりも肉食系女子の代表だから。