こうして僕らは、夢を見る
引き留められたのは予想外な展開だった。名前も知らない少年に退路を塞がれた事で若干狼狽える。
なッなんで!?何故このタイミングで引き留める!?私は帰りたいのに!
沸々と込み上げてくる理不尽な怒り。と……焦り。
ああ。いますぐ帰りたい。こんなとこに居たら気が狂いそうになる。泣きたくもなる。‘狡い’とか思っちゃうあたり私は少年に嫉妬している。
しかし少年に悪意は無いと自分に言い聞かせてギュッとコンビニ袋を握り締め耐える。
あ――…
絶対アイス溶けてるじゃん。
暑い。帰りたい。切実に帰らせてくれ。お姉さんはテニスになんてこれっぽっちも興味ないんだよ。寧ろ見るのが辛いんだから。醜い心を晒す前に帰ったほうが自分のためなのかもしれないのに。
内心愚痴を零しながらテニスコートの方へ振り返る。
「……っわ!」
び、ビックリしたあ……ッ!
振り向けば目の前に少年が居た。どうやらいつの間にか此方に来たみたいだ。最近の子はお姉さんをビビらすのが好きみたいだね。心臓幾つ合っても足りないよ。
少年は今にでも美女をも悩殺出来るような艶っぽさが零れる瞳で私をジッと見つめてくる。
お、おいおい。君は本当に高校生か?なにその艶かしさ。どこぞのホストを思い出すんだけど。
「テニスすんの?」
「……え?」
「ちげ〜の?お姉さん懐かしそうな目で見てっから。」
――……よく見てるな、この子。