こうして僕らは、夢を見る
「蕾は結婚とか考えないの?恋愛とかに興味無さそうだけど結婚願望とかある?」
「あるよ。愛より経済重視で。そんでもって玉の輿になるの。」
「…夢が無いわね〜。駆け落ち出来るくらいの一世一代を風靡する大恋愛してみなさいよ。」
「無理。駆け落ちするくらいなら別れる。」
「…はぁ〜」
溜め息をつく桜子を横目で見る。何で?呆れられる理由が私には解らない。駆け落ちなんて大層な事してまで愛したいとは思わない。
家も家族も友達も捨てるんだよ?無理無理。絶対に私は出来ない。
宛のない愛の逃避行なんて子供の家出と同じだ。独り、ジャングルの中に放り込まれたようなもの。そんな佳境の中で生きていける自信なんて皆無。
ホームシックになるのは確実に。それに母さんと父さんに親孝行とかまだしてないもん。徐々に少しずつ尽くしていくつもりなのに。まず愛の逃避行する予定もない。相手が居ない。
「司くん達はどうなの?」
「何が?」
「駆け落ち。」
「はあ?」
私は穴が開く程まじまじと桜子を見つめる。
「高校生だよ?高校生に手を出すとかあり得ない。わたし犯罪者になっちゃう。」
「可愛い幼児に手を出すロリコンじゃないんだから。それに今は歳の差結婚とか恋愛とか流行ってるじゃない。23歳の年下妻とか。」
「それは遺産目当てでしょ?」
「…アンタどこまで夢がないの」
今度こそ本気で呆れたような眼差しで見つめて来る。どこか可哀想な瞳を向けられているけど屁とも思わない。
現実主義って言って欲しい。桜子は夢見がちだよ。ほんとロマンチック。だって23歳年上とか有り得ないでしょ。自分が30歳になれば53歳だよ?私は一緒に歳を重ねたい派だから。それに年下はまだ青い。
「ダンディーなオジ様が好みなの。それか渋さを追及したようなワイルドなひと。」
「さすが任侠好き。」
感心したような呆れたような、
よく解らない感じで頷いた桜子。