こうして僕らは、夢を見る
だけど自分が童顔だと言うことを叩き付けられてしまい複雑な気分になった事に変わりない。


まさか童顔故に高校生に軟派のような行動を取られる日が来るとは些かショックだ。





「腑に落ちないな〜…」





連れて来てくれたことには感謝するどね。





「それにしても―――――――――――凄い人の数、」





素早く気持ちを切り替えると目線をテニスコートに移した。視界に飛び込む光景に深々と呟いた。



テニスコートの周りには観客席なベンチがある。そのベンチは人で埋め尽くされていた。


一体何処から溢れてくるのやら。人・人・人・人・人の山。《人》詳しく言えば――――――女の子で。




「きゃあああ!」
「頑張ってえ!」
「カッコいいー!」



光陽を制服を着た女の子の歓声が凄まじい。











「ア、アイドルのコンサートかよ」





思わず心の声が零れた。

苦し紛れに呟く。





「――…ふうん。6面同時に遣ってるのね?」





目の前にあるコートは6面。


3ペアで構成された光陽の4つのチームと対戦校の3ペアで構成された4つのチームが同時に2ペアずつラリーしている。1チームに2面を割り当てられているらしい――――――――――と知るのは数分後。この時の私には何が何だか良く分からなかった。


増設されたみたいだから奥にまだコートはあると思う。どんだけ金掛けてんだよ!?思わず呆れるが無理は無い。デカ過ぎる。


そして不意に私は手前のコートに目を向けると――――‥








「あ、朔君と楓君」

「どこっ!?」




怖ッ!


勢い良く腕を掴むと私の視線の先を必死に追おうとする桜子。綺麗な顔が私の間近にある。緊張どころか恐怖だ。迫力が凄い。


震える指先で「て、手前」と私はコートを指した。





「や〜ん!イケメ〜ン!あの子が朔君なのよね?格好いい!写真より余っ程良いじゃない!でも楓君は少し厳つくないかしら?だけどあれで照れ屋とか重宝よ!」





きゃあきゃあと騒ぐ桜子は、あの応援している女の子の集団に交じっても違和感が無いと思った。流石イケメン好きのミーハー。





「ねえ蕾!隣のコートって写真の子じゃない!?」

「え?―――あ。涙君と籃君」

「きゃあああ!やっぱり!何あの組み合わせ!美少年ばっかじゃない!私達の光陽なんて芋ばっかりだったのに!不公平だわ!」

「芋って、」





おいおい。


思わず呆れてしまう。そりゃ数年も経てば生徒の系統も変わるよ。―――――と言うより彼等が特別なだけだと思う。


あんな美形がゴロゴロ居たらココは美形大国になっちゃうよ。
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