こうして僕らは、夢を見る




「涙君と籃君。それと楓君と朔君がペアみたいね。なら司君と翼君という子がペアなのかしら?」

「何の?」

「何って―――テニスに決まってるじゃない。軟式はダブルスよ?他と同様に団体と個人があるわ。確か団体は3ペアで1ペアが補欠だった筈」

「選手登録は4ペアなの?」

「そうよ」

「ほぇ―………」





物知りな桜子に思わず感心する。


そう言えばソフトテニスはダブルス。でもペアの組み合わせまでは知らなかった。それなら消去法で桜子の言う通り司くんと翼がペアって事になるのかな?





「あ。」

「どうしたの?」

「あそこ。司くんと翼。」





ベンチに座る司くんと翼。


司くんは真面目な目でコートを見つめている。しかし翼は寝てる。部活中だぞ貴様。二人を目にすると又もや騒ぐかと思った桜子は意外な反応を見せる。冷静に頷き何かを分析している様子。





「あの子達、レギュラーなんじゃない?」

「え?」

「ほら。あの2ペアとベンチ組。丁度3ペアよ?」





コート内に居る朔君達を指差し、ベンチに座る司くん達を顎で示す。あくまで推測の範囲で物を言う桜子に思わず笑ってしまう。





「まっさか〜!こんなに部員居るんだよ?レギュラーなんて早々に慣れるもんじゃないりよ」

「だけど蕾、彼が部長だって言ってなかった?」

「あ」

「やっぱり。」





そうだった。だ、だけどペアが翼だよ?補欠に滑り込んだぐらいが丁度良いんじゃない?―――――そんな私の考えをアッサリ打ち消す。





「レギュラーなら仲良いわよね。そりゃあ毎日一緒に居るはずよ。加えペアなら尚更。」





ちょっと!マジで?本気で言ってんの?

確かに毎日一緒に居る。まだすんなり納得のいかない私に桜子は決定的な証拠を叩き付けた。









「あのジャージ。レギュラー専用よ?」

「………」



開いた口が塞がらない。


――――――本当にレギュラーなんだ。











「ふ、ふうん?ま、まあ。そんな予感はしてたけどね!」

「嘘つくな」



はい。嘘です。


これっぽっちも思ってませんでしたよ。


信じがたい衝撃の事実に狼狽えていた――――――そのとき。






きゃあああああああ!
わああああああああ!
おおおおおおおおお!




歓声が沸き上がった。




「す、すご」




楓君がスマッシュを決めたらしい。おいおい。1ポイント決めるだけでこんな雄叫び上がってるなら勝った暁の歓声は半端ないよね?
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