こうして僕らは、夢を見る
「IH出場だからね」
「え」
「何も今年だけじゃないわ。光陽は昨年もIH出場したらしいわよ?それも優勝を治めたらしいしね。今年優勝すれば2連覇ね」
「え」
「ほら。だから今日の練習試合は肩慣らしじゃない?もう国体が目前に迫ってるし」
「え」
待て待て待て。ちょっと待てよ。先々話進めないでよ。頭が付いていかないんですけど!桜子さん。置いてきぼりにしないで下さい!IHって全国高等学校総合体育大会の事だよね?司くん達が?―――――――目眩がしてきた。
「IH地区予選とIH県予選も優勝を修めて国体への切符を手に入れたみたいだし――――――――――――――まさかアンタ、」
漸く呆然とする私に気づいたのか桜子が驚きを露にした。驚いてるのは此方なんですけど。
「…強かったんだね。司くん達」
苦し紛れの一言。
ハァーと溜め息が横から聞こえた。し、仕方ないじゃん!疎いんだから!まさか彼等がそんな名高い選手だとは思わなかったよ。
「…レギュラーって正選手事だよね?マジで言ってんの?翼達が?チョコミントかチョコクッキーのアイスの旨さで喧嘩する楓君と翼が?あのジャージただ憧れて着てるだけじゃない?」
「素直に受け入れなさいよ」
「ええ―………マジか」
あり得ない。
何人部員居るの?しかも光陽は全国の中でもトップクラスの学校。こぞって腕の立つ選手が居ると思う。なのに何故。寝てるやつ居るよ?それで良いのか光陽。
「それに良く聞きなさいよ。誰の歓声か」
そう桜子に言われて耳を澄ます。雑音程度にしか捉えていなかった女の子たちの歓声。しかし、良く聞くと信じられない言葉が飛び交っていた。
―――……え゛
「きゃああ!籃くーん!」
「涙君こっち向いてええ!」
「格好いいー!」
「朔君ー!」
「頑張ってええ!」
「楓くーん!」
絶え間無く響く声。内心濁った声を零す。
耳を疑ったが間違いなく飛び交うのは彼等の名前。明らかに女の子達はテニス部を応援と言うより個人を応援している。