こうして僕らは、夢を見る
「……あらら」
凄い人気。常日頃から彼等と歩いていると女の子達の視線が犇々と感じていたからある程度予想はしていた―――――が。その予想を遥かに上回る程強烈な熱気。
「スポーツ万能。オマケに美形。そりゃあモテるわよ。見なさい。あそこ聖架女子の制服」
「うわ。お嬢じゃん」
「あっちも隣街の学校よ。対戦校でも光陽でもない学校の制服の女が多いわね。あ、星祥」
「ええええ。星祥とか才女!」
「他にも居るみたいね」
「何しに来てるの?」
「馬鹿!」
っ痛い!
思いっきり頭を叩かれた。
「大方お目当ては蕾と同じでしょうね。追っ掛けとか?」
「司くん達の?」
「それ意外に何があるのよ」
物分かりが悪いらしい私はギロッと睨まれた。
し、仕方ないじゃん!
だって追っ掛けだよ?
何じゃそりゃ。今の若い子の行動力には完敗だよ。たかが高校生なのに。確かに見た目はそこらのアイドルグループに見劣りしない。ココまで来ると呆れを通り越して感心せざるを得ないよ。
それにしても―――――…
「きゃ〜!」
「やば〜い!」
煩いな―……
試合歓声ってこういうものなの?
なんか甲子園かなんかと勘違いしてない?――――――時にそこのツインテールの子。双眼鏡を何に使うのか聞きたいんですけど。
甲高い声援が癪に障る。ボールを打つ音さえ聞こえない。いつも皆がストテニで打っているときの、あの音が聞こえてこない。結構、安らぐ音なのに。私の好きな音は女の子達の声に掻き消される。
応援の仕方は個人の自由だけど度を越しているため徐々に苛々してきたとき。
(グシャッ!
隣で何かが潰れるような音がした。バリッとアルミが歪むような音。不審に思って横に目を向けると――――――空き缶を片手で握り潰す桜子が居た。