こうして僕らは、夢を見る




「他校の生徒がウチの部に何のようだ!?そうか、分かったぞ!?偵察か。生憎ウチの部は偵察されて狼狽える柔な部員は居らん!」


「え。いや。私は…」


「マネージャーか。どこの学校のマネージャーだ?浮わついた格好だな。君の年頃はお洒落もしたいと思うがマネージャーには不似合いな格好だと思うぞ?」


「だから…」


「マネージャーと云たるものサポート精神を怠ってはならんのだ。確かに可愛い子に応援されれば頑固な男も少しは遣る気を出すだろう。しかしだな?他校に来るときは制服というのが基本だ。」


「………」


「君の部にもあるんじゃないか?基本は大切だ。基本を忠実に。まず何事も基本からだ。お洒落も良いが基本がある。それは礼儀だ。他校に出向くには正装。所謂制服と言うことだ。君も派手なの服より規則正しい制服のほうが似合うと思うぞ?それに生憎だが今日は遠征で部員は居ない。偵察に来るなら、また出直して来なさい。」






聞く耳を持たずペラペラとマシンガントーク。早すぎて何を言っているのか少ししか聞き取れなかった。顔は渋いが声色は柔らかく怒っている訳ではないと解る。



この青ジャージの先生には見覚えがあった。



久しぶりに見た嘗てお世話になった恩師に自然と口許が緩む。










――――‥‥ああ、



変わってないな、荻窪先生。








「――………プッ。ふふっ、ふははははははは!」

「む。何が可笑しい?」

「私ですよ、先生。覚えていませんか?」






一見説教のような先生の言葉。しかし刺は無く寧ろフォローするような言葉だ。偵察に遣ってきた他校の生徒にも気を使う荻窪先生に思わず笑みが零れてしまう。



自分で自分を指差すと荻窪先生に聞いた。



荻窪先生は腕を組むと悩ましげに私を見つめる。上から下まで私を見返す。そして不意に組まれた腕を解くと―――――…








「もしや………蕾、か?」





目を見張り、そう言った。





「ふふ。お久し振りです。」

「おお!蕾か!久方ぶりだな!?誰か分からんかったぞ!」

「他校のマネージャーに間違えたくらいですからね。」

「す、すまんかった。」





童顔を気にする私を知っている為か申し訳なさそうにポリポリと頭を掻く荻窪先生。そしてお世辞のような誉め言葉を笑いながら私に言い始めた。
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