こうして僕らは、夢を見る
「それに此所は引退式に出た選手しか入ったらイケないと思います。部外者が入るのはただの侮辱。皆は誇りを持って入部してきてるんですから。御法度ですよ。」
「蕾もOBじゃないか。」
「違います。離脱者です。正式な場を設けて引退した訳でもない私は今の部員に胸を張ってOBと言える勇気ありません。」
言えない。絶対に。
途中で止めた身なのに【初めましてOBです!】なんて言える訳がない。烏滸がましいにも程がある。自分を無下にしたい訳じゃない。本心から【OB】とは言えない。
最後まで此所に居なかった私が現役の子に教える事は何一つない。それは現役の子達が此れから学んでいく事だと思う。自ら芽を吹かせる筈だから。
「蕾は俺の教え子には変わりはないさ。」
ポンッと頭に手を乗せてくる先生は私の考えている事に可も不可もなく、そう言った。
「荻窪先生も私の恩師に変わりはありませんよ。感謝してます。」
「お!?どうした、蕾よ!いきなり真面目になりおった!捻くれ者の蕾が素直になるなんてな!」
ワシャワシャと頭を撫でる荻窪先生は笑いながら戯けたように言う。
私の身長は伸びてないため然して変わらない。こうして頭を撫でて貰うとあの頃に戻ったみたいに感じる。高校時代も良く頭を撫でられていた。
「おお。忘れるところだった。蕾ちょっと待っておれ。」
不意に何かを思い出したみたいで部室の扉を開けると中に入って行った荻窪先生。青ジャージが扉の中へ吸い込まれて行く。
開けっ放しの扉。
少し覗き見ると直ぐ手前には飾られた沢山のトロフィー。歴代の選手の者から現役の子達の物までズラリと並んでいる。
「凄いな〜……」
数増えた?そりゃあ増えるよね。
今日の遠征は何なんだろう?小さな大会なら賞杯とか持って帰って来そうだなあ〜……。数年後活躍していく卵がゴロゴロ居る筈。
あ!あの冷蔵庫まだある。私達の世代の部長が置いたんだよね〜。夏は暑いとか言ってさ。しかも部費で。完璧私利私欲だし。
「変わったようで変わってない。…かな?」
部室を見ながらポツリと呟いた。
ここからじゃ部室の中を全て見ることは出来ない。本当に少しだけ。だけど此れでいい。少し部室を感じられただけで満足だもん。
まさか。数年経った今になって、此所に来る事になるなんて思っても見なかった。これっぽっちも。――――司くん達と出逢わなかったから来る事も無かったと思う。
そう考えると不思議。この出逢いが偶然では無く出逢うべくして出逢った必然的なモノに感じる。
「蕾もOBじゃないか。」
「違います。離脱者です。正式な場を設けて引退した訳でもない私は今の部員に胸を張ってOBと言える勇気ありません。」
言えない。絶対に。
途中で止めた身なのに【初めましてOBです!】なんて言える訳がない。烏滸がましいにも程がある。自分を無下にしたい訳じゃない。本心から【OB】とは言えない。
最後まで此所に居なかった私が現役の子に教える事は何一つない。それは現役の子達が此れから学んでいく事だと思う。自ら芽を吹かせる筈だから。
「蕾は俺の教え子には変わりはないさ。」
ポンッと頭に手を乗せてくる先生は私の考えている事に可も不可もなく、そう言った。
「荻窪先生も私の恩師に変わりはありませんよ。感謝してます。」
「お!?どうした、蕾よ!いきなり真面目になりおった!捻くれ者の蕾が素直になるなんてな!」
ワシャワシャと頭を撫でる荻窪先生は笑いながら戯けたように言う。
私の身長は伸びてないため然して変わらない。こうして頭を撫でて貰うとあの頃に戻ったみたいに感じる。高校時代も良く頭を撫でられていた。
「おお。忘れるところだった。蕾ちょっと待っておれ。」
不意に何かを思い出したみたいで部室の扉を開けると中に入って行った荻窪先生。青ジャージが扉の中へ吸い込まれて行く。
開けっ放しの扉。
少し覗き見ると直ぐ手前には飾られた沢山のトロフィー。歴代の選手の者から現役の子達の物までズラリと並んでいる。
「凄いな〜……」
数増えた?そりゃあ増えるよね。
今日の遠征は何なんだろう?小さな大会なら賞杯とか持って帰って来そうだなあ〜……。数年後活躍していく卵がゴロゴロ居る筈。
あ!あの冷蔵庫まだある。私達の世代の部長が置いたんだよね〜。夏は暑いとか言ってさ。しかも部費で。完璧私利私欲だし。
「変わったようで変わってない。…かな?」
部室を見ながらポツリと呟いた。
ここからじゃ部室の中を全て見ることは出来ない。本当に少しだけ。だけど此れでいい。少し部室を感じられただけで満足だもん。
まさか。数年経った今になって、此所に来る事になるなんて思っても見なかった。これっぽっちも。――――司くん達と出逢わなかったから来る事も無かったと思う。
そう考えると不思議。この出逢いが偶然では無く出逢うべくして出逢った必然的なモノに感じる。