こうして僕らは、夢を見る
「つか離せよ。変態か。触り方がエロい。欲情をそそる。」
「なっ、ちが、違うよ!ただ良い腕してるなーって思っただけだもん!崇のほうが変態じゃん!そんな厭らしい目で私を見ないでよ!『キャー!助けてー!』」
「アホか。」
慌てて腕から手を退けた。芝居掛かったような私の言動に崇は笑みを浮かべて頭を小突いて来る。
「『やだー!襲われるー!恐ろし!下ろし!大根おろし!和風ハンバーグ食べたいー!』」
「『がおー!蕾ちゃん襲っちゃうぞー!食べちゃうぞー!ペロリと平らげちまってもいいかァー!?俺はハンバーグステーキが食べてえんだー!蕾ちゃんと瓜二つの肉が食べてえー!』」
「ちょっと待てコラ。私がハンバーグステーキのように肉と脂が乗ってると言いたいのか貴様?私が肥ったと?ああ"?」
「実際肥っただろ。昔よりポッチャリしてるぞ?」
「ぐっ、」
否定出来ん。きっと酒肥りだっ。それに昔は運動していたから筋肉がありスラッとしていたけど、今は引き締まりがない。プニプニしたお肉がお腹回りを覆っている。
口を紡ぐ私の頭をワシャワシャと笑いながら掻き乱す崇。
「まぁまぁ。そう不貞腐れんなよ?蕾は肥ってても蕾だ。少し肉が付いた位が丁度良いって事だ。」
「フォローになってねえし。」
寧ろ傷つきましたが?
更に不機嫌になる私の頭をポンポンと撫でながら崇は慰めてくれる。心底複雑な気分だし。傷つけられた奴に慰められるとか。
「頬とかプニプニして良いじゃねえか。赤ちゃんみてえだし。」
「ちょ、突くな!」
「うっわ。柔けえ。」
私の頬っぺたを突く崇。阻止するが一向に止める気配を見せない。それどころか詰まんだりして来る。
痛みを感じないのは威力が弱いから?それとも崇の言う通り脂肪だから痛みを感じないのかも。本気でダイエットしなきゃヤバそう。
そう焦り始めた矢先の事だった。
何かが飛んできたのは。
「お、っと」
崇が間一髪で"何か"を避けた。
その瞬発力に尊敬する。
私は前を横切った"何か"に呆然と立ち尽くす。突然の出来事に吃驚して。
横切るまでその存在に気付けなかったのに避ける崇は流石だ。
――――ガシャンッ‥――!
私と崇を引き裂くように横切った"それ"はフェンスにぶつかった。地面に落ちた"それ"はコロコロと私の足元まで転がるとコツン、と履いているサンダルに当たり止まった。