こうして僕らは、夢を見る
フェンスにぶつかった白い球。



"それ"は白く丸いもの。



柔らそうな形状からは想像しない程豪快にフェンスに埋め込まれるように放たれた"ボール"





白い掌サイズのボールは、

テニスボール。





足元のボールから飛んで来た先に視線を移すと目を見張る。











「………」






そこにはただならぬオーラを纏った司くんが居た。



手にはラケット。そのラケットでボールを打ったみたい。何で?と訳が分からず首を傾げた。しかし当の本人である司くんは凄まじい目付きで睨んでいる。



"私を"睨むと言うよりも"崇を"睨んでる?何で崇?知り合い?



素早く近寄って来た司くんは私に触れようとするが―――――――それは叶わない。その前に後ろに引き寄せられたから。






「っわ、」




崇に腕を掴まれ無理矢理引き寄せられた体は司くんから引き離されて背に身を隠された。



私の視界を阻むように、
司くんの行く手を阻むように、
崇を前に立ち塞がった。





「誰だ。」





司くんを鋭い瞳で睨んだ気がする。曖昧なのは崇の後ろに居るため表情を窺う事が出来ないから。



声が頼りな状況。その声が啖呵を切るような声色だったから、多分司くんを睨んでいると推測した。





「お前が誰だよ。」

「コイツの知り合い。」

「知り合い?―――――ハッ。自惚れ?蕾さん嫌がってるし。」

「嫌がってる?寧ろ喜んでるわ。つかテメー誰だよ糞餓鬼。歳上に対する態度か?ああ"?」

「好い年した男が大人気ない態度だね。尊敬に値しないな。」

「餓鬼が調子こいてじゃねえよ」





司くんが別人に思えた。いつもの穏やかな司くんは居ない。言葉も荒く苛立ちを隠せていない。そんな司くんに不安が拭えない。



ま、ま、ま、ま、ま、待った!

待て待て!落ち着こう!ね?ね?



何だか2人とも違う勘違いをしている気がしてならない。



慌てて仲裁に入る様に、私は2人の間に割って入った。背から身を現した私に何か言いたげにする崇を振りきり司くんに弁解する。





「つ、司くんっ。知り合いなの!何もされてないし嫌がってもないから!叫び声とかただの洒落合いだから!普段ならあんな黄色い声出さないもん!こんな野蛮人そうな奴でも私の友達なの!」

「誰が野蛮人だ!テメーに言われたかねえわ、じゃじゃ馬!」





私の首に腕を回し強く締め上げる崇。首が締まり息の出来ない私は「ギブギブッ!」と慌てて崇に降参の手を上げる。
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