こうして僕らは、夢を見る

「貴方が思うほど俺は血の気が荒い方では無いですよ。」

「どこかだ。顔面狙ってボールを打つ奴が言う台詞かよ!?」





その言葉にフッと笑みを浮かべた司くん。話の内容さえ知らなければ見惚れて終うような優美な微笑み。



こんな美男子がフェンスの歪ますなんて末恐ろしい。本当に人は見掛けによらないよね。





「ただ一瞬だけ、カッとなっただけです。」





私の腰を掴むと司くんは自分の方に引き寄せた。



え………?な、なに……?





「知り合いだか何だか知らないですけど――――――気安く触らないで下さいね?俺のだから。」






――……Chu.



音を立て頬にキスされた。





「消毒です。」





ニコッと微笑まれる。



しかし、直ぐさま硬直化した。





「あ―……。"そういう"ことね。」





固まる私を余所に崇は納得した様に頷いた。頬を押さえたまま固まる私には何が何だか理解出来ない。なかなか付いて行けない思考に狼狽える。



え?え?なになに?どういうこと?何に崇は納得したの?て言うか――――…






「どうかしましたか?」

「…えっと、き、き、きっ、」





ジッと司くんを見詰めている私に気づいたのかニコッと笑みを向けられる。『kiss』と言おうとするが吃ってしまい中々言えない。





「い、いま、頬っぺたに、」





頬に流れるようにされたkissに顔を赤らめる。



純情な訳じゃないけど久々のドキドキイベント。略してドキイベに胸が高鳴る。



攻略本もなく選択肢も出てこない。行き場を失った矢印が宙をさ迷う。





「何ですか?」

「だ、だから……kiss……」

「聞こえませんよ。」





笑いを含んだ言葉に悔しくて口を紡ぐ。司くんはドSらしい。口元が笑っている。恥ずかしがる私を見て崇も馬鹿にするように笑っている。



そんな2人に悔しくなった私は眉を顰めて言ってやった。





「どうせkissって言っても頬だしね!ま、まあ一応、私はこれでも大人だし?Frenchの方もdeepの方も経験済みだからさ?頬っぺたにkissくらいじゃあ狼狽え無いよ!お・と・な・の女性だから勿論、それ以上の事も経験済みだもん。頬チューなんかじゃ揺るがない!ベロチューくらいじゃなきゃね!ふははははははは!何れにせよ、子供には未だ早い話さ!」





狂ったように笑いながら高らかに告げた。若干声が裏返っている。意図だけ伝われば其れで良し。



【頬チューは愛犬とkissしているようなもの。頬チューくらいじゃへこたれないわ!】と強がりで大人の女性アピールをするつもりが―――‥‥‥‥
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