こうして僕らは、夢を見る










「翼(つばさ)」





そして又もや性悪男の後ろから声が掛かる。私はその声に導かれるように階段ではなくテニスコート側に目を向けた。



そこには"籃"と"翼"と一緒にテニスをしていた3人の少年達が居た。少年達も2人と同じく光陽高校の制服姿で手にはラケットを持っている。





「どうした?」





単調な声色で話し掛けるのは一見クールに見えそうな少年。



クールそうな少年の問いに"翼"と呼ばれた性悪男は又あの意地悪そうな笑みを浮かべた。この悪戯っ子のような笑い方は苦手だ。





「おもしれー奴見つけた」





ニヤニヤ見てくる嫌味な男。



はっきり言って心底不愉快です。切実に帰りたいです。でもこの男が私の腕を掴んでいるから帰ろうにも帰れない。離して欲しい。



どうしよう。このままじゃ私の清らかな腕が汚染されていく。





「いだだだだっ!痛いって!」

「お前いま失礼な事考えただろ」

「考えてません!これっぽっちも思っていません!なので離してください!」





マジで痛い……!陣痛並の痛さ!赤ちゃんを生んだ事が無いから分から無いけど我が友である聡美は花畑が見えたって言ってたし多分死ぬほど痛いんだと思う。



聡美は早期結婚だからね。羨ましい。まだ20代なんだからドンチャン騒ぎでも起こして騒ごうよ?でも私も彼氏の1人や2人くらい欲しい。あ。2人も要らないか。浮気になっちゃう!私は一途だから浮気はしないけど。それ以前に貰い手だ。只今模索中ですから。



パッ、と離された腕を擦りながら何故か将来の事を考える私。この少年は顔は良いけどか弱い女性の腕を捻り上げるなんて有り得ない。男として最低ランクだよね。





「……何だよ。」

「べつにぃ。」

「………」

「いひゃい(痛い)!しゅみまへん(すみません)!もうひましぇん!(もうしません)」




何をだよ。


思わず自分で突っ込んじまったぜコノヤロウ。元から私は何もしてませんけど?なのに何で私が謝ってんだ!被害者だぞ!か弱き乙女なんだからね!クソッ。頬つねるなんて男あるまじき行為だ。



痛む頬を押さえながら性悪男を睨む。年上の威厳なんて合ったもんじゃない。この男は優しさを子宮に置き忘れて産まれてきたに違いない。きっとそうだ。間違いない。
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