こうして僕らは、夢を見る
「つ、つかさ、くん?」
ア、アレ?何カ怒ッテマスか?
「バーカ。救い様がねえわお前。流石行き当たりバッタリな女だ。バカ過ぎる。」
焦る私に崇が呆れたように呟いた。助けを懇願する眼差しを向けるが素知らぬ顔で逸らされた。
「……蕾さん」
「は、はいっ」
「……」
「……あ、あの」
「……」
「……つ、司くん?」
静かに名前を呼ばれて慌てながらも、即座に応答する。心の内では司くんのオーラに畏縮している。しかしジッと私を見つめたまま何も言わない。
それどころか私の頬を撫でるようにソッと手を添えた。蒼眼に吸い込まれそうだ。私達は見つめ合う。そして無言の見つめ合いに終止符を打ったのは司くんだった。
「、え」
ゆっくり司くんの顔が私に近付く。気のせいとかじゃない。確実に近づいている。少し屈んだ司くんと私の距離は狭まる。
「……ちょっ、」
慌て止めようと胸を押し返すが、私の腰と頬に添える司くんの手の力の方が格段に上でビクともしない。
そうこうしてる間に司くんの綺麗に整った顔は隔たりが少なくなる。その度わたしは焦る。
だって
――――――3㎝
これって
――1㎝
「………っ」
kissだよね?
息を呑んで眼を瞑った、
―………そのとき。
「お兄ちゃ〜ん!」
1人の女の子の声が響いた。
同時にピタッと止まる司くん。私は相変わらず硬直したまま。
少しでも動くと唇が触れ合いそうな程に至近距離。話すだけでもソフトに触れてしまいそう。
「あ、俺……」
顔を退け体制を元に戻すと口元に手の甲を宛がった。自分が今しようとした事に驚いているみたい。驚きたいのこっちですけど!?
叫びたい思いを必死に堪えていると、
司くんは自分の行動が面白かったのかフッと笑みを浮かべた。
「前に言いましたよね?妬かせるなって。これでも嫉妬深いんですよ。あまり煽らないで下さい。それと、」
一旦言葉を切ると、再び私に顔を寄せる司くん。
「次は無いですから。」
今度から失言には気を付けよう。―‥コツンッと額に司くんの額が軽く宛がわれ、そう心底誓った。