こうして僕らは、夢を見る
「………」
「………」
私と崇は立ち尽くす。
顔はムンクの叫びのような顔付きだと思う。ピシッと入った亀裂が息苦しい。
「……な、何で崇、」
「……面倒だったから、」
「……子供は無垢なんだから。何でも信じちゃうよ?」
「……悪い。」
重苦しい空気のなか私達は小声で会話中。
尚も恵ちゃんはフルフルと小刻みに震えて俯いている。
「……弁解しとけよ馬鹿。」
「……だから悪いって。」
心底溜め息を付きたくなる。要領が悪い崇に。
訳は数年前に遡る。
仲が良かった私達を恋人同士だとあらぬ勘違いした恵ちゃん。
そういう事に興味がある年頃なのか興奮冷めあらぬ感じで囃し立てられた。その誤解を崇が解いておくと言ってたが――――――――解いていないらしい。
あれから何年経ってんの!?
だから恵ちゃんの勘違い。まず私と崇がカップルな訳無い。1つのジュースにハート型のストロー差して一緒に飲めない。ペアルックとか絶対無理。お互いにTと縫われた服とか着れないし。
――――――ガッ!
「ひっ」
勢いよく私の腕が掴まれ、か細い悲鳴を上げた。
誰かなんて見なくても分かる。見たくない。怖い。怖すぎる。恐る恐る腕を掴んだ御方を見ると―――――‥‥
「どういう事?」
物凄い爽やかな笑顔を浮かべた司くんが居た。爽やか過ぎて怖い。心無しか腕がキリギリと軋む。
「ねえ?どういう事?」
「っ痛い痛い痛い!」
「俺と云うものが在りながら浮気?」
「いやいや。意義有り!可笑しいよね?いつから私達はそんな関係になったの?」
「一妻多夫制とか認めないから。調教でもする?誰彼無しに気安く触らせ過ぎだし。髪と言い頬と言い。もう少し警戒しなよ。」
「たんま!たんま!ストーップ!痛い痛い!強く握りすぎ!折れる折れるっ!マジで折れる!本気と書いてマジと読むんだよ!?」
「返事は?」
「わ、分かった!分かったから!一妻多夫制じゃなくて一夫多妻制って事だよね!?もう、じゃんじゃん浮気して呉れて構わないよ?恵ちゃんとか恵ちゃんとか恵ちゃんとか。可愛い子とイチャラブするのを笑顔で見送るよ!」
「誰もそんな事言ってませんよ。それに俺は尽くすタイプなんで他の女は眼中にないです。これでも一途ですから。」
パッと腕を離された。
ドSが尽くすタイプとか吃驚だ。
腕が解放される頃には敬語へと戻っていた。司くんが砕けた口調に為るときは、正直言うと恐ろしい。必ず何か嫌な事が絡むから。