こうして僕らは、夢を見る





「痛かったですか?」

「す、すこし。」





嘘。滅茶苦茶痛かった。



一瞬だけ花畑見えたもん。儚そうなイメージとは掛け離れた握力の強さ。司くんを侮り過ぎていたかもしれない。





「すみません。でも蕾さんの自業自得ですから反省して下さいね。」

「え゙」





なにそれ!?



え。いま謝ったよね?謝ったのに私の責任?寧ろ司くんが反省して欲しいんですが。何か開き直っているよね?明らかに反省の色が見えませんけれども。



でも僅かに赤くなった私の腕を擦る手付きが優しいから何も言えない。優しく撫でる手に痛みも和らいで来る。






「………」

「まっ、こういう事だ。諦めろ。時には諦めも肝心だ。お前も若いんだから、まだまだこれからだ。こういう経験も貴重だぜ?」

「……うん」




―――――端で私達の遣り取りを切なげに見つめる恵ちゃんの頭を撫でる崇が居た事は知らなかった














「蕾ちゃんっ」





ツインテールを揺らして小動物のような恵ちゃんが近寄って来る。その愛らしさに悶える。本当に崇と兄妹とは思えない子だよ。



元気良く目の前に立ったけど直ぐに恵ちゃんはウルッと瞳を潤ませた。涙に耐えるように唇を噛みしめる。瞳を潤ませる恵ちゃんは小動物を連想させられて可愛いけど私は慌てふためく。





「………」

「め、恵ちゃん?」

「つ、つぼみ、ちゃん、」

「ええ!?えーっと、えーっと!あ。私どっか行った方がいい!?そうだね、うん!若き少女の淡い青春を邪魔しては駄目だから奈良県に鹿でも見に行こうか番長!」

「1人で行け。」

「つ、冷てーよ崇さん。」

「奈良県より名古屋で味噌カツとひつまぶし食いてーわ。」

「私は京都で漬物かな。」

「何故に漬物チョイス!?もっと抹茶とかにしろよ!まず京都の醍醐味は建造物だろうが!清水寺とか金閣寺とか銀閣寺とか観に行く気は皆無かよ!?やっぱ俺は祇園に行きてえな……」

「フッ。花より団子さベイビー」

「食い意地張んなデブが。」

「デブデブ言うな!ぽっちゃり系が人気なんだよ!?ガリガリより今はぽっちゃり系の時代到来中なんだからーっ!」





私達の終わらない掛け合いを制止するのは恵ちゃん。


涙に耐えながら一生懸命何かを私に伝えようとしている。



幾つも歳下の子なのに、真剣な瞳を向けられて僅かに臆す。
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