こうして僕らは、夢を見る
恵ちゃんは司くんのファンだと公言してたけど優しく凄く良い子。



流石崇の妹!



私の想像とは掛け離れていた。昔の恵ちゃんのまま。怖い女の子に成長していたら―………と懸念を抱いていた数分前の私を殴りたい



本当にファンだと言うことには驚いたけど。もう司くんなら芸能界入れるよ。世の中の女性を虜に出来るんじゃないかな?



あれやこれやと恵ちゃんの後ろ姿を見つめ思考に耽ていると、その兄貴が跡を追うように背を向ける






「なら行くわ。」







車の鍵をポケットから取りだし、そう言う。






「え、もう行くの?」

「おー。恵も待ってるしな」

「そっか」






何だか寂しい気分になる。久々に会えたのにもうお別れなんて…



悄気る私に崇は笑った。






「お前が同窓会に来れば済む話だっつーの。次は来いよ?」

「うん。崇に会いに行くよ。」

「おー。待ってる。」

「代わりに桜子が。」

「お前が来いよ!?」






手を上げ立ち去ろうとした崇が瞬時に振り返った。番長の突っ込みのキレは今も健在だな!






「えー。面倒。」

「はあ!?会いたくねえのか!?久々に会ったんだぞ!?何年振りだよ!相方なら来い!舎弟の癖に生意気だっつーの!」

「確かに会いたいけど、」

「なら来い!絶対に来いよ!」






ビシッ!と指を差され言われた。崇は今度こそ去ろうとしたけど、不意に何かを思い出したように顔だけ此方に向けた。






「あと変わったって言ったけど、ガチだぜ?」






その言葉に思い出す。



私の"何が"変わったかと悩んでいたことを。善し悪しどちらの意味か。ぽっちゃり系とか言ってたしきっと悪い意味だろうと思ったが――――‥‥‥












「マジで可愛くなった。」






ニィと口元を上げた崇をポカンと眺めた。






「じゃあな。じゃじゃ馬。」






片手を上げて去っていく後ろ姿は高校時代よりも逞しいものになっていた。ふとした誉め言葉に呆然としていた私は我に返ると、口元に手を添えて声を張り上げた。






「おーい!言い逃げすんなバカヤロー!崇も格好いいよー!私好みのダンディーな男!イケてるメンズの仲間入りおめでとうー!」






聞こえた?



きっと聞こえてるよね。



崇笑ってるもん。



笑い声は聞こえないけど、声に出して笑っている。






そうして、右手大きく振ると息を吸い込み叫んだ。






「また逢おうねー!!」






名一杯の声で叫び有りっ丈の笑顔を浮かべた。崇も手を振り返してくれた。恵ちゃんが待つ校門へと足を進める崇の後ろ姿を見えなくなるまで眺める。



次の同窓会には参加しようと心に決めた。同時に、何年も参加しなかった筈の同窓会が急に楽しみになって来た。



バイバイでも、
さよならでも無く、

"また"と言ったワタシ。



"また"が待ち遠しいと久方ぶりに遇った崇の後ろ姿を眺めながら、思った……
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