こうして僕らは、夢を見る
ペットも買った事ないよ?



普通にオタマジャクシを飼う人なんか居るの?磯巾着とか熱帯魚なら分かるけど。熱帯魚なら実家の水槽ににも何匹か居たよ。



だってオタマジャクシとかゲコゲコ煩いカエルに生るだけだよ!?哺乳類なら未だOKでも両生類はアウトでしょ。



だって家の中を徘徊されたらどうする?バスルームに居たら、おぞましい!湯槽でリラックスしてるとき発見とか気絶しちゃうよ。







あ!



でも小さい頃にヒヨコを買った事がある。



成長すると鶏に生ることを知った私はペットショップに泣きながら返品しに行ったけど。



あれは喜劇ではなく悲劇の涙だ。可愛いピヨ子が鶏に生る姿を見たくなかった幼稚園児の私はヒヨコを無惨にも手放したっけ?



ヒヨコを手放したときは涙に咽ぶ1日だったね。



めちゃくちゃ懐かしい。



今さっき翼に成長過程がどうとか言ってたけど、その成長過程が見たく無い余りヒヨ子の飼育を放棄した私は保護責任者遺棄罪だよ。



家族同然だったの…っ!


うう……っ。ヒヨ子……!


でも鶏はゴメンだ………!





ヒヨ子を懐かしむ私に司くんから視線を感じた。



横を向くとマジマジと私を見ている。頭の天辺から爪先まで。





「今日は随分可愛いですね。」

「え!?な、なにいきなり」

「全身可愛い格好してるからです。女の子みたいで可愛いですよ」





何その、いつもは女の子じゃないみたいな言い種。



確かに司くん達と逢うときはラフなTシャツにヨレヨレのジーンズに汚いスニーカーだけどさ。





「有り難う。ちょっと今日はお洒落してみたの!今日だけだけど。夏らしい感じでしょ?」


「似合わねえんだよ」


「はあ?」


「似合ってますよ?」


「だよねー!司くんならわかると思ってたよ!この良さが分かるなんて最高!可愛いよね?ね?もう司くん大好きー!」


「俺も愛してますよ」


「いちいち世辞は要らねえよ。つかチビは“愛してる”なんて言ってねえだろーが。ああ?だいたい可愛い?司くん今すぐ病院に行きなさい。重症だ。救急車のサイレンが聞こえるぜ。チビが高い靴履いてもチビのまま何だぜ?可愛いより笑いもんだろ」


「な、何だと!?この花柄ワンピ可愛いでしょ?アシメ裾だから足はチラ見せだし胸元も肩も肌見せてるから世の若旦那は私の色気でノックダウンなんだから!」


「違う意味でノックダウンだな。嘔吐が止まらねえわ」


「帰れ!」


「お前が帰れ。そしてさっさと着替えろ。露出狂か。似合わねえ。似合わねえ。似合わねえ。物分かりが悪いんだよ不細工――――――――――似合わねえって言ってんだろうが!」


「しつこい!」





わかってるよ!



似合わないんでしょ!?



何度も言われなくても分かるよ!だけど似合わないって言い過ぎ!ちょっと酷い!傷ついた!司くんよりも翼が病院に行きなよ!勿論精神科に!アンタは人を傷つけすぎ!しかも私限定だしね。一種の病気だよ。かなり重い重症な。



さっさと治してくれ。



翼は治療に専念すべきだよ。
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