こうして僕らは、夢を見る
本気で自信無くしてきた……
凹む私を知ってか知らずか司くんが言う。
「あのヒトの為ですか?」
やけに真剣な声色。
それを汲むと身を引き締めるが、私は首を傾げた。
あのヒトって崇のことだよね?
どうして崇の為にお洒落するの?逢ったのは偶然なのに。それに崇の為に身形を整えるならOL風にする。スーツとかで“出来る女”を装う。だって崇の好きなタイプは知的風女子だもん。
「違うよ。どちらかと言えば今日は司くん達の為。ヨレヨレの服を着て司くん達に恥を曝したく無いもん。私は恥とか気にしないけど。私だけの事じゃないしね。」
「へえ……」
と言うより、私がいつもの格好で行こうとしたら桜子に頭を叩かれて家にUターン。
クローゼットやタンスを漁られてコーディネートされた。お陰様で家は散らかっている。フローリングには服や鞄が雑に置かれている。元からグチャグチャだけど。
光陽へ司くん達を応援しに行くならキチンとしろ!と桜子に叫ばれて即行着替えさせられた。
皆の為だと言えば僅かに目を見開いたあと直ぐさま満足気に司くんが頷いた。
「司くん?」
「似合ってます。でも一目見れただけで満足です。なので次からはいつもの格好で良いです。」
「どうして?確かにいつもの方が楽だけどね。自分らしいし。でも何で急に?―――――――ああ!やっぱ私が可愛い服着たら笑う?うわぁッ恥ずかしい!ゴメンね?似合わないのに調子乗って可愛くしちゃった!」
「だからです」
「え?」
「可愛いから嫌なんです。可愛いですよ、滅茶苦茶。だから他の男に見られたくない――――――――――――と翼が思ってます」
「待てやゴラア」
鬼が降臨した。
「お前今何つった?誰が誰を可愛いって?どうやら俺の耳が壊れたらしい。今謝れば許して遣ら無いこともねえ。水に流してやるぜ?さあ謝れ。今すぐ謝れ。そして弁解しろ!繊細な俺の心が傷ついた!こ、こんな不細工を可愛いなんて……!クソッ……」
「たった今、私の心が傷ついた」
「俺は本当の事を言っただけなんだけど。まぁ仕方ないから謝って上げるよ。ごめんね?翼。」
「謝れば済むってもんじゃねえ!そんな甘くねえんだよ!人生を嘗めるな!」
「アンタ司くんに謝れば許すとか言ってたじゃん!?水に流すんじゃないの!?」
「うるせえ元凶!加害者は黙ってろ!」
「わたし被害者ですけど。」
「だいたいお前が変梃な格好して来るからだろうが!いつもの遭難者みてえな格好はどうした!お前はマダガスカルに生息する珍獣のような野生な女だからピラピラしたスカートなんか履くな!マダガスカルで生き延びられなくて良いのか!?」
「理不尽んんんんん!なんか色々理不尽すぎる言い訳!どう反応すれば良いの!?殴っていい?怒ってもいい場面?アンタが真剣すぎて分からない!」
グダグダの会話に私は頭を抱える。
不真面目な会話に見えて余りにも真剣な瞳をする翼は訳が解らない。
せっかく小綺麗にしてきたのに。何だか解らないが不評だ。2人からバッシングの嵐。いつもの格好にしとけば良かった。