こうして僕らは、夢を見る
なに…?
厭な笑みを浮かべて来る桜子に嫌な予感が拭えない。本気で頼む。余計なことは言わないで欲しい。
割って入ってきた桜子に司くんが話し掛けた。第三者――…………況して桜子とか止めてくれ!
絶対に作り話が入る!
「親密な関係なんですか?」
「親密も何も親密よ〜?何たって何度も一夜を共にしてるんだから。それはもう熱い夜らしいわよ。翌朝学校で聞かされるもの」
「なっ!」
「へえ……」
黒さが滲み出た笑みを浮かべる司くんに慌てふためく。
へっ、変な言い方しないでよ!確かに週末は崇の家に泊まったよ!でも熱い夜ってはゲームに没頭した夜でしょ!?お陰で毎晩ゲームに熱中する私たちは寝不足。それを愚痴っていたから知ってる筈。態とか!
「保健室で2人でサボったりもしてたわよ?」
「マジかよ。遣るね〜お姉さん。保健室ってベッドしかねえじゃん。男と女がベッドで遣る事なんて1つしかねえだろ」
「いやいや!保健室には医薬品とかあるから!怪我した人を治療する場だから!怪我した人のために設けられたのが保健室だから!」
「お、おまっ、裏切りやがったな!?」
「何が!?楓君、話聞いてた!?保健室は保健室だからね!?」
「うるせえよ痴女!」
「止めろ!イメージ壊すな!清純派系乙女だから!いつかフワフワのシフォンワンピースが似合う女になるのが目標なの!」
話に尾ひれを付けられ次々に私のイメージが崩れ去る。もちろん、マイナスのほうへ。
「あら。1限目からサボって放課後まで2人で過ごす関係がただのお友達なの?怪しいわね。ねえ、そう思わない?朔君」
「ああ。蕾さん、口を割ったほうが楽になるぞ」
「だから違う!サボるのは普通でしょ?いや普通じゃないけどさ。ただ仲良いだけ!皆も女友達いるでしょ?それと同じだよ?」
「はあ?そんなの居ねえわ」
「え!?翼ほんとに男!?キャピキャピの女子高生とお近づきに為りたいとか思わないの!?」
「珍しく意見が合ったわね?蕾。それには私も同感。思春期は女に貪り付く男が大半なのに靡かないなんて凄い精神ね」
「もう少しオブラートに包もうよ」
直球過ぎる桜子に呆れる。女を貪るってサラッと言う台詞じゃないよ。確かに桜子には同感だけど。
だって高校生は彼女を作ったり女友達と和気藹々とする歳でしょ?甘酸っぱい青春の歳なのに。
あ。もしかして
「……大丈夫。絶対翼にも良い女の子が現れるよ。見た目は良いから自信持ちな。これから頑張って傲慢な性格治して行こう?出来る限りのサポートを私もするから」
「人をモテねえみたいに言ってんじゃねえよ。負け組どころか勝ち組だ。その腐った頭に刻め。俺はモテるんだよチビ助」
「………」
「喧嘩売ってのか!」
「……いや、ううん。翼はモテるから大丈夫だよ。うん。そう思わないと生きてイケないよね」
思わず哀れみの視線を投げ掛けてしまう。ナルシストな翼を蔑んだのは私だけでは無かったから見逃して欲しい。