こうして僕らは、夢を見る
「俺は蕾さんと居るほうが楽しいです。女達に囲まれるくらいなら蕾さんだけ傍に居ればそれで良い」
「………」
「山程いる女より蕾さん只1人で俺は満足です」
「………」
な、なんなんだ。
こ、この子は。
顔中に熱が迸る。
司くんにサラッと赤面する言葉を言われた私は間抜け面を曝した。口を開けたまま言葉が出なかい。
「やーん!素敵!司くんは一途なのね?ルックス良し性格良しなんて最高じゃない。蕾も見習いなさい。色んな男にフラフラしていたアンタが私は情けないわ…」
「桜子にだけは言われたくない」
蔑む瞳で桜子を見つめる。
本当に桜子にだけは言われたくない。本気で桜子には情けないとか言われたくない。人遣いが荒くて男子生徒を僕扱いしていた女王のアンタにだけは言われたくない。
桜子の言葉に司くんが呟く。
「フラフラ?」
「ええ。モテる女の悲しい性よ。告られても1人に絞れないから全て保留にしていたの。それなのに友達の関係を保とうとしていたわ。卑劣よね?朔君」
「ああ。モテる女とは怖い生き物だな。それが天然故のものと言うところが尚更な」
「蕾ちゃんはいつも【これからもお友達のまま居ようねっ?】とか笑いながら男の一世一代の告白を帳消しにしてきたのか」
「1等賞よ籃君。正しく蕾は悪魔。悪気がないから憎めないのよ。無邪気な笑顔は計算し尽くされた笑顔だと言うのに……」
桜子は額に手を置き疲れたように「フゥー」と溜め息を付く。憎たらしいけど麗しい。だけど中身は腹黒。真っ黒だ。私のイメージを次々と破壊して行く只の魔女。
私は計算とかしてないからね!?言い掛かりは止めてよ。
ギュッとカバンを握る。今すぐにでもカバンに付いた向日葵を毟り踏んづけたい。桜子を向日葵と思ってグリグリと。
「フフフ。蕾は昔から可愛いものね〜?それはもう天使よ」
「思ってないでしょ」
「ええ。もちろん」
「………」
あまりに即答されると傷つく。
「私の次に可愛いわよ。外見だけ。中身は駄目。男の中に混じって騒ぐわ、崇と保健室で麻雀する蕾の何処が可愛いの?」
「くそっ、否定出来ん」
「でしょ?中身は三流よ」
「やっぱり仲良いんですね」
「ええ。崇と蕾は憎たらしいほど仲良いわよ。私との約束より崇を優勢するほどね。ケーキバイキングで桃フェアが開催されたとき崇を優勢したのよ?私じゃなくて。ほんとあり得ないわ!」
「まだ根に持ってたの?だから、あれはLIVEだって言ってるじゃん。桜子は心が狭いよ」
高校生のとき好きなミュージシャンのLIVEに崇と初参戦。桜子から桃フェアのお誘いを受けたけど私はLIVEを選んだ。桃フェアなんていつでも行けるしね。でも桜子は『私より崇を選ぶの!?』と女優宛らの涙を流した。勿論演技。