こうして僕らは、夢を見る






「正解。豚だ」






楓君の言葉に頷いた翼。持っていたボールを掌に落とされ、慌てて受け取る。



豚と言う翼に納得がいかない者が多数。桜子が私の手にあるテニスボールを見ながら呟いた。





「キャラクター的な感じかしら?ブタって言うより子ブタ?可愛いけど何か可笑しいわね」

「ブタ?俺は兎だと思ったぜ」

「籃も?俺も兎かと…」

「栗鼠」

「宇宙人だろう」





各々口にする。



桜子は子ブタ。
籃君と司くんは兎。
涙君は栗鼠。
朔君は宇宙人。



強ち朔君が一番正しいかも。纏めれば宇宙人だもん。顔は豚っぽいけど耳は兎。胴体は栗鼠。しかもリボンが付いてある。



変だけど…





「これ可愛いよね!ブサ可愛い!キモ可愛い!」





気に入った。





「それお前」

「え」





顔が引き攣るのが解った。平然と翼が指差したのはキモ可愛キャラで不細工な子ブタ。



リボンが付いているのが些か気になる。そんな心遣い要らないし。周りに居る皆が肩を震わせてる。笑いたくもなるよね。



これがワタシ?



………キモいけど何故か可愛く見えるから複雑。



だんだん見ているうちに愛着が沸いて来るのは何故?翼マジックだ。ミラクル過ぎる。キモ可愛キャラクターが可愛いキャラクターに見えてくる。





「ボールに書くとか器用だね…?かなりムズそう。胴体と顔が合ってないとこが気になるけど絵自体は上手いね」

「俺様に不可能はねえ。態々書いて遣ったんだ。感謝しやがれ」

「有難う?」

「―……ププッ」

「………」





笑いが堪えきれたくなった桜子が噴き出した。



このブサキャラと私を見比べては笑いが込み上げるらしく口元に手を宛てている。



私は桜子を白けた瞳で見つめた。その視線に気付いたのか桜子は咳で誤魔化すと内輪を扇ぐ。





「ゴホン。アツーイ、アツーイ。サクラコ超アツーイ」

「海に沈めて上げようか?」

「やっぱり暑くない」





ニッコリと笑みを浮かべた私に珍しく顔面蒼白。直ぐさま私から目を逸らした。





「嘘つきー。桜子の法螺吹きー。暑くないわけないじゃん。メチャクチャ暑いよ?」

「は?全然暑くないし。蕾だけじゃない?私は海に沈めて貰わなくても涼しいわ」

「うん。私は暑いよ?だから今からかき氷食べに行こうと思って」

「え!かき氷!?食べたい!」

「暑くないんじゃないの?」

「くっ、卑怯よっ」





歯を食い縛る桜子。



久しぶりに有利な立場に快感。



ちょっと虐めすぎたかな?と笑みが零れる。





「暑いしかき氷食べに行こっか。1人でかき氷食べても詰まらないから一緒に来てくれない?」

「……仕方ないわね」





手を差し出すと、渋々と言った感じで握り返してくれた。



プライドの高い桜子はこうでも言わないと来てくれないし。仕方なくと言いながらも輝いている瞳は隠せていない。



かき氷に浮き足立つ桜子が微笑ましい。



20過ぎの女が手を繋ぐとか笑えて来る。でも嫌じゃない。乗りで差し出したのに躊躇う事なく握ってくれる桜子に嬉しくなった。
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