こうして僕らは、夢を見る




「やっぱりメロン味ね。でも夏と言えばスイカ!あー。スイカが恋しい。丸々ひとつ平らげたいっ!蕾の顔に種を当ててやるの」

「なにその攻撃宣言。止めてよ。私は静かにかき氷が食べたいし。えーっと、小豆と練乳が掛かったかき氷が食べたいな!」

「聞いてないわ」

「酷っ!」





言葉のように手を握りかき氷を食べに行こうとするが――――――桜子と手が離れた。



後ろに引っ張られたことで。



二の腕を付かんだのは翼。



その横からはヒョコッと籃君が顔を出した。





「ちょっと!なに!?」

「それこっちの台詞な。蕾ちゃんどこ行くつもりだよ?何しに来たのか忘れたわけじゃね〜よな」

「うん。試合観戦だよ?」

「分かってんじゃねえの」

「うん。お疲れさま。もう充分に満喫したよ。じゃあ帰るね?」





バイバイと手を振り自然に去ろうとしたが、それは叶わない。





「満喫どころか見てねえだろうが。せめて見ろや」

「なーんだ。やっぱり翼は見て欲しかったんだ。だけどゴメンね?かき氷が私を呼んでるから。小豆とたっぷりの練乳を掛けて食べたいの!」





引き留めた翼に高らかに言う。私の頭には、冷たい氷に乗った種子が暗赤色の小豆とたっぷり掛かったコンデンスミルク。



考えるだけで涎が出てくる。



キーンと頭痛がしながら、暑い中で食べるかき氷は最高に旨い。



今すぐにでもかき氷を食べに行きたいけど腕を翼に掴まれているため前に進むことが出来ない。





「なら私は行くわ」

「は!?ドコに行くの!」

「何ってスイカを買いに。アンタの分のかき氷は私が食べといてやるわ。氷の上にメロンシロップをたっぷり掛けて食べとくわね」

「駄目!1人だけ食べに行くなんて許さない!私も行く!」





行こうとするが翼が離してくれない。ガッチリと二の腕を掴まれている。



桜子は腕を掴まれている私を呆れたように見ている。なんで私!?普通に愛想尽かすのは私じゃなくて翼の方でしょ。



かき氷ー!と悲痛な叫びを聞くと桜子は早くしろと瞳で訴えて来る。


試合よりも、かき氷と言う方程式が出来上がった卑劣な私の頭脳。腕を振り解こうとしたとき――――…





「行きましょうか」

「「は?」」





間抜けな声が出た。それは私だけじゃなく翼も。唐突すぎる司くんの言葉に翼も肝を抜かれたのか、パッと腕が離された。



私と翼は一瞬だけ目を合わせた。翼の瞳から「今コイツは何て言った」と語られた。



朔君が謎の発言をした司くんに聞く。





「ドコに行くんだ」

「ドコって蕾さん達と行くに決まってだろ。朔ってバカ?」

「あら!司くん達も来るの?ならスイカ割りしましょうよ。本当は桃が良いけど夏はスイカだと思わない?」

「そうですね。俺は蕾さんが居れば何でも良いですけど」

「きゃー!蕾ったら羨ましい!」




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