こうして僕らは、夢を見る
翼と涙君と籃君に遭ったのは酔い潰れた、あの夜。



あの日から誰にも逢っていない。



他は翼達から聞き出してるかな?何て説明するんだろう。有りの儘。見た壗の場景を話すのかな?





『豚が男と腕組んでたぜ?それも親父。アイツ、モテないからとうとうちょいワル親父路線に走りやがった。けらけらけら!』

『…妖しい』

『俺が思うにあれだな。援助交際じゃね〜の?お姉さんの小悪魔っぽさに親父はイチコロだぜ。札にキスでもしてそ〜だわ』





みたいな。



この会話が有りそうだから怖い。易々と想像出来る私が怖い。結構仲が深まったのかな。



籃君辺りはこの前言われたことを捩っただけ。この会話予想ちょっと良い線突いてるよね。




嫌味な程に解りやすい少年達の反応。



勿論あの日からテニスコートにも光陽高校にもお馴染みのファミレスにも行っていない。その変わり酒と煙草の量が増えた。



それを物語るかのようにテーブルの灰皿には山盛りの吸い殻。そしてビールの空き缶がテーブルを埋め尽くしている。



携帯の電源を入れて電話して逢えば済む話。だけど怖いんだ。私は軽蔑されるのを恐れている。鷹見沢さんと居るところを見られたのが嫌な訳じゃない。私の醜い部分を知られたくない。この濃い化粧もそれを露にしてるよう。



早く洗お、








ヨタつきながら洗面所に向かおうとドレスの裾を揺らす。



左へ右へとフラつく度にブルーのドレスが意味もなく揺れている。その揺れ具合が私の二日酔い具合を表している。



半端ないくらい頭が痛い。昨夜は桜子と他の女の子達とダーツバー。酒豪揃いで強がり過ぎた。



顔を洗うためにスロースペースでフラフラと脚を進めていると…






ドンッ







「…―っと」




棚にぶつかりコケた。



膝から床に着いため顔面衝突は免れた。



しかも棚にぶつかった衝撃で物が次々と落ちて来る。雑誌や漫画がバサバサバサー…………と無惨に落ちた。



飾ってあった砂時計が落ちてきたときは流石に慌て掌を前に出して破壊を防いだけど。



ぼんやり落ちて来る私物を落胆しながら見つめていると、








「〜〜〜っ!?」





声に為らない悲鳴を上げる。棚から落ちてきた物が頭を直撃。頭を押さえて痛みに悶える。っ痛い!ぐぐぐ!うぐぐぐぐ!我慢だ!―――――――――余りの痛さに辞書でも直撃したのかと思った。





しかしそれは杞憂に終わる。





目の前には長方形の箱。



落ちてきた衝撃で開いたのか、蓋が開いた箱が合った。



中には何冊ものノート。綺麗なものから汚れの目立つノートまで。



落ちて来たのは雑誌ではなく漫画でもなく辞書でもない。



ノートが詰まった箱だった。
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