こうして僕らは、夢を見る
























ジャ――…



流れる水。



水音と共に水が滞りなく流れ出る



キュッと蛇口を閉めると真っ白のタオルを顔に宛がう。






「目真っ赤。兎じゃん」






鏡に映る私は浮腫のある顔に腫れた瞼。そして充血した瞳。正しく不細工な兎。普段より酷い顔。



洗面所でメイクを落とすために顔を洗っていた私はタオルで拭く。柔らかいタオルの感触が気持ちいい。好きな匂いが鼻を掠める。私は石鹸の匂いが大好きなの。






「休みで良かった…」






石鹸の香りに癒されながら肩の力を抜いた。神様の助けだよ。生憎夜は仕事が入っているけど。女の子が少ないから仕方ない。



これくらいなら化粧で誤魔化せる。夜には瞼の腫れも引くだろうし目薬でも差しとけば大丈夫。それまでLet’s小顔マッサージ!夕方まで遣ろう――――…って






「げっ!?」






えええ!?



見間違い!?



洗面所に置いてあるデジタル時計を見れば【13:25】



確か起きたときは10時42分だった気がする。



どんだけ泣いてたの!?もしかして神様の悪戯?時間を進めちゃった感じ?それに私だけが気付いてしまったとか!?――――冗談とかじゃなくて案外本気の考え。






「有り得ん。何が起きた?体重が次の日3キロ増えてたときのようにショック」






ぶつくさと呟く。



鏡に映る自分は本気で怪訝な面持ち。



しかし時間よりもショックなのが自分の顔。約数ヶ月程前に起きた大事件並みにショックを受けた。



ある日のこと。人気スイーツ店の食べ放題へ行ったのは良いが次の日3キロも増量していた。ケーキは増量していいけど体重は増量しなくてもいいよ。



更にナイスボディから遠ざかってしまった。そして今日。更に追い討ちを掛けるように米国女優さんの麗しい美しさから遠ざかった。ハリウッド女優に近づくどころか哺乳類の仲間入りを果たしまった。ある意味では快挙だ。



鏡の中の不細工な兎と睨めっこしていると、











ピーンポーン






―…チャイムが鳴った。






突然呼び出しようのベルが鳴った事で私は首を傾げる。



誰だろう?宅配便?お隣りさん?それとも大家さんとか。



この時間帯に誰か来るなんて珍しすぎる。



マンションのため洗面所から然程遠くはない玄関。洗面所を出れば直ぐ扉が見えるくらいの距離。



仕方なく私は目の前の扉に脚を伸ばす。



短い距離なのに幾度となるチャイム。






ピーンポーン
ピーンポーン
ピーンポーンピーンポーン
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポ―――‥







「はいはい!ちょっと待って下さい!」







しつこすぎるチャイムに小走りで扉に近寄る。ピンポンダッシュをする悪餓鬼だったら説教してやる。フンッ!と鼻息を勢いよく吹かしながらサンダルを履いた。



高級ドレスに百均のサンダル。



何と異色な組み合わせ。






そして私はドアノブを捻った――――――――――――――――――――――ガチャ





ゆっくり扉を開ける。



呼び出しボタンを連打していた人物を確かめるために顔を覗かせると、













固まった。



カチンコチンに固まる。



3秒だけ。






―………素早く我に返ると扉を締めようとした。



しかし瞬時に扉に足を挟まれて扉を締める事が出来なかった。



それが約2秒間の出来事。






たった5秒程度で私は顔面蒼白になった。
























「閉めてんじゃねえよ」





「つ、翼」





一人の男のせいで。
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