こうして僕らは、夢を見る
しかしそれも束の間。突然静かになる。



それと同時に翼が脚をスゥーと静かに扉から退かした。



し、閉めてていいの?



突然閉めれるようになった不思議な状況に首を傾げる。でも何だか閉めたら駄目なような気もした。そうこうしているうちに扉が一回だけ外側からノックされる。






コン





耳を澄まさないと聞こえないくらい小さい音で、ノックされた。






「蕾さん」

「……司くん」






久し振りの声。扉が邪魔して金髪も蒼眼も見えない。しかし司くんは相変わらず柔らかい口調と優しい声色で話す。






「蕾さんが逢いたくないなら逢いません。無理に話も聞きません。扉越しで良いので声だけ聞かせてください」

「つ、かさく、」

「心配しました」






そう言われハッとする。



電話もメールも無視している状況。電源もOFFにして情報源と通信手段を絶っていた。3日間音沙汰無しの私を心配して此処まで来てくれた彼等に私は何て事をしているんだろう。大人気ない。普通は立場が逆だ。



とは言え、やっぱり恐い。



だけど開けなくちゃ。



震える手でチェーンに手を掛ける。鍵もしてないしチェーンを外せば扉は開く。



ゆっくりとチェーンを手にし――――――――外した。



チェーンを外したら直ぐに扉を押そうとした。しかし私が動く前に事は動いた。チェーンの外した音が聞こえたと同時に…








バアーっン!




「ひっ」




勢いよく開け放たれた扉。



勢いよく開いた扉に私は胸元で手を握り締めると固まる。目の前には扉ではなく司くんが。



いったい何が起きているのか理解出来ず冷や汗を流しながらオロオロする。






「遅い」

「つかさ、くん?」

「何ですか?」





扉がやっと開いたとでも言いたげに溜息を付かれた。ヤレヤレと言った感じで肩を竦めるがその嫌味な動作さえ美しさがある。それに加えて微笑みが恐い。先程の淋しげな声も見当たらない。



私は目をパチパチと瞬きするが、やはり哀愁は帯びていない。






「へ?あ、あれぇ?可笑しいなぁ。あきらかに可笑しいよね?さ、さっき無理には逢わないって」

「何言ってるんですか。蕾さんに逢いに来たんですから逢えるまで帰るつもりは無いですよ」

「なら今のは」

「ああでも言わないと開けてくれませんよね?あれで駄目ならこじ開けるつもりでした。素直に開けて良かったですね?いま頃鍵が壊れてましたよ」

「………」






……だ、騙された。


何つー恐ろしい高校生だ。
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