こうして僕らは、夢を見る
「お邪魔しまーす」
「えっ!?ちょっと籃君!?勝手に入るな!っておい!翼も!」
「はぁ暑かったぜ。おいクーラー付けろ」
「家政婦じゃねえよ」
私の横を悪びれもなく通る籃君と翼に続き次々と勝手に入る面々。引き留めるが意味を成さない。
そして何故か楓君だけは入ろうとしない。
いや、この対応が正しいんだよ?普通人の家に勝手に入っちゃ駄目なんだから。部屋に入る皆の輪から逸れている楓君。
それどころか一言も話していない。先ほどから一声も聞いてない。ただジーッと扉を見ている。正確に言えば私の家に入ることを躊躇っている様子。
「入らないの?」
「は、はあ!?入れるか!」
「ならココに居る?暑いよ?」
「うっ、」
「ほら。おいで」
「………」
扉を開けて中に入るように託せば渋々と言った感じで入る。楓君は律儀にもお邪魔しますと言った。靴も揃えている。緊張からか礼儀正しく為っている。終始、羞恥で耳が真っ赤。可愛い!
しかし部屋に入ると一変。
口を開け、あんぐり。
ウヨウヨと部屋中を観察するように動いている楓君の瞳。
少し歩けば雑誌が爪先に当たり、また少し歩けば服を踏んづけてしまう。簡単に言えば足の踏み場がない。
「…ち、散らかってねえ?」
「女はこんなもん」
「…そ、そうなのか?」
「うん」
「間違った知識を植え付けるな。これは散らかり過ぎだ」
朔君に咎められた。確かに散らかっている。
さっき棚から落ちた本はそのまま。ファッション雑誌も漫画本も。踏んだら確実に割れるCDも数枚散らばっていて危ない。
フローリングに散らばった服。殆どが仕事用。あと昨日着たパジャマも。洗濯機に入れるのが面倒でまだ洗っていない。
机の上は相変わらずビールの缶と吸い殻が占領している。ホームパーティー後にも見えるけど残念ながら一人宴会。アルコール中毒にでも間違われそう。
呆れるのも無理はない。普通ならこの汚さにドン引きだ。なのに家から出る事なく居座る皆には感心する。傍迷惑だけど。
「おい。烏龍茶」
「なら俺は爽健美茶で」
「……コーラ」
「おね〜さん。俺は珈琲ね」
「何寛いでんの」
突っ立っている2人を余所に4人はリラックスモード全開。
まるで我が家のように寛いでいる。