こうして僕らは、夢を見る
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それから時計の針はグルグル回りあっという間に数日がたった。
いまはコンビニの帰り道。病院の廊下をスイスイ進む。楽なのは私が車椅子に乗っているから。
『コンビニに行きたい』と我が儘を言うが母さんに怒られた。でも断固に譲らない私に母さんは呆れながら連れて行ってくれた。
久々のコンビニに私のテンションはMAX。ビニコン!ビニコン!コンビニエンスストア万歳!しかし久しぶり過ぎで人の波に酔った。陰鬱な女子だ。まだJKなのに。
「……蕾?」
「む?」
「いや、『む』じゃなくて…」
車椅子を押してくれる母さんは私を見て何かを言いたげに口を紡ぐ。そんな母さんを尻目に私はラスクを頬張る。コンビニで買って貰った菓子パン達を膝に置いて。
「うひゃひゃ!うめー」
ラスクを食べると歓喜の一言。思わず笑顔になる。砂糖と卵白とか付けただけの薄切りのパンなのに旨すぎる……!
病院食は質素。量は少ないし味は薄い。ラスクさえ世界一美味しく感じる。退院したらとりあえず肉と揚げ物を食べたい。笹身は飽きた!
私の口のなかに詰まっているラスクに母さんは怪訝な面持ち。
「確か食事制限あったわよね?何で普通に食べてるの。ママが怒られるでしょ?やっぱり没収。決められた物以外食べたら駄目よ」
「食事制限は糖尿病のひとだけ」
「はい。嘘」
「むぅ!だって腹減るんだもん!母さんには分からないよ!あの量の少なさに味気なさ!今日くらいいいでしょ?ね?」
「…………」
「今日だけ!今日だけだから!」
「………はあ。次は無いわよ」
「やった!」
車椅子に乗る私は再びラスクを食べる。旨いー!やっぱり砂糖に限る!和食は好きだけど病院の和食は和食じゃない。和食とは認めない。ただの精進料理だ。
「ほんと難儀な子ね〜………」
母さんの呟きは聞こえなかった事にする都合の良い耳。だって今はラスクのほうが大切。没収されると困るし。ふふふ〜ん。と、鼻唄混じりにラスクを頬張った。
499号室
500号室
501号室
502号室
不意に事が起きたのは私が入院する503号室に前に差し掛かったときだった。ほんとに些細なことが大きな事へと勃発してしまう。