こうして僕らは、夢を見る












「楽になりたいと懇願した男の子が目の前で死を賭して線路に居る姿を見たときの私の気持ちの何が分かる?小さい男の子が震えて死に直面する姿を見たときの私の何が分かるっ?生きたいと願った子を救いたいと思ったから私は遮断機を越えた。守るために出来た傷なら私は誇りに思う。なのにっ、なのに、死にたくなるっ?」





ノンストップで託し上げる。



止まらない。歯止めが聞かない。すこし息が切れる。



凄む瞳で睨み付けた。



私が一度も生きることに絶望しなかったと思うか?真っ暗な先行きに不安になった。いっそのこと、このまま闇に呑み込まれたいと思った。だけどその度に男の子の涙が浮かび上がった。辛いが生きたいと強く願った、あの呟き。





『死にたくない』





カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン





「それをお前らに言われたくないっ!」





何も知らない癖に。
何も解らない癖に。



耳を塞ぐ。



カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン



耳鳴り。耳鳴り耳鳴り耳鳴り。



軋む。痛い。頭が。心が。



迫りくる音に私は耳を塞いだ。





「……っあぁ゙っ」





涙を堪えるために唇を噛み締める。止めどなく溢れる涙。口のなかにもジワジワと血が広がる。噛んじゃった。鉄の味がする…。生きたいと願った子が居るのに死にたくなるなんて言わないで欲しい…。たかが怪我。されど怪我。命には返られないじゃん。私の行動が否定されたみたいで嫌だった。脚を奪われてまで、した行動が無駄だったのかと思わされる。



看護婦さんの瞳から静かに雫が零れ落ちるのが分かった。声を出さずに泣く2人。



母が私の頭上から覆い被さるように抱き締めてくる。





「お願い、ですからっ。こ、れ、いじょ、っ、娘を、きずつけないで、くださいっ」





母さんの啜り泣く声が聞こえる。



それと同時に主任さんが私たちに頭を下げて直ぐ様2人の看護婦さんを連れ出した。2人の看護婦さんは泣きながら深々と頭を下げ去っていった。カンカンカンカンカンカンカンカンカンカン―――――――――‥‥‥
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