こうして僕らは、夢を見る








それは先生の本音。病室では何も言わなかった荻窪先生が本来の音色を露にした。塞ぎ止めた本音を吐いた。自嘲する笑みと共に。



諦めると言う私の背中を押せない自分を嘲笑。



ゆらゆら紫煙が立ち込める。



焔色の空に吸い込まれるように天に消えていく。この溢れ出してくる私の想いも吸い込まれたら何れだけ良かったか。



私は私を止める術を知らない。



先生の一言が私に火を付けた。



ギリッと音を立てて歯軋りする。悔しさ、悲しさ、憎しみ、嫉妬、悋気、怒り、欺き












「――――――――早い!?ならいつ諦めるんだよ!?どうせ諦めなきゃイケない!選択肢は1つしかない!もう戻れないんだよ!遅いも早いも無いだろ!?諦めるしか無いんだよ!」





喜怒哀楽が激しい。



こんな荒れ狂う心に嫌気が増す。



荻窪先生は私のためを思って本音を露にしたのに。私が怒り狂う事を分かっていながら言ったのに。ほんと最低。何から何まで最低。どこまで餓鬼なんだ。








いったい成れの果てには何があるのか、



とうとう私は今まで押し込めてきたモノが爆発した。



言いたくなかった。こんなこと。



衝動で口に出してしまう。



このときの美空蕾は“過去の蕾”と“未来の蕾”に殴られるはず。





冒涜。


この日私は夢を見る人たちを冒涜した。









「何が夢だよ!夢なんて所詮は夢!叶いもしない夢を追い掛けてる奴なんて馬鹿だ!夢を見るやつは馬鹿を見るんだよ!」






欄干をダンッと叩いた。



殴るように。





ガァ――ン!

ガァ――――…ン!

ガァ――――――………ン





山彦のように木霊する音。


橋が泣いた。






ジンジン痛む手の甲。指。


そして痛む心。痛いなぁ。痛いよ―――――――………
< 240 / 292 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop