こうして僕らは、夢を見る
( epilogue )
(「群雀蘭か、」)
(「む、む?」)
(「群雀蘭。和名だよ。」)
(「へぇー」)
ミラージュさんが育てた上木鉢をまじまじと見つめる玲音くん。
(「ミラージュさんも隅に置けないなー……」)
綺麗に咲いた夏咲きのオレンジウムを見つめて苦笑い。
小さい雀の群れが飛ぶ様が可愛らしいから「可憐」という花言葉が出来たらしい。他には「清楚」
可憐も清楚も私には程遠い花言葉
しかしもう1つの花言葉をわたしは知っている。
その花言葉を頭でリピートさせれば苦笑い気味に笑いが零れる。
(「……叶わないな」)
無理に背伸びをするなと言う事かそれともただの洒落か。いづれにせよ、この花を選んだミラージュさんには叶わない。
(「え?ママが何?」)
(「んー?ミラージュさんは綺麗な女性だなーって」)
(「ほんとっ?自慢のママなんだ!優しくて賢いから!僕もママみたいになるの!でもパパみたいに格好良くなりたい!」)
(「良い男になりそうだ」)
(「そのときは蕾姉ちゃんをお嫁さんにする!」)
(「ふふ。有り難う」)
(「それまで蕾姉ちゃんは優しい蕾姉ちゃんのままで居てね!」)
ピタッ――‥と固まる。
固まる私に玲音くんは気付いていない。無邪気に笑う。その笑顔に一点の曇りもない。出逢った頃は薄暗さのあった瞳は相変わらず今日も綺麗なエメラルドグリーン。この目の色が嫌だと言わなくなった玲音くん。嬉しい。何だか雛鳥の成長を見守る親鳥の気分。これからもスクスク育って欲しい。
薬品が香る病室で私は微笑んだ。