こうして僕らは、夢を見る






甘い吐息が溢れる。



そんな状況下で右隣に座っている男がこの現状に気付かない筈がなかった。





「……ってえな」





捻られた挙げ句、乱暴に叩き落とされた籃君の手。勢いよく叩かれた手を籃君が押さえる。



叩いた音が綺麗に部屋に響く。



あまりの痛さからか、私の首から顔を退かすと顔を顰めた。



私の左隣に座っていた籃君の手を叩いたのは右側に座っていた人物。身を乗り出すと勢いよく籃君の手を捻り上げ叩き落とした。それは僅か数秒間の出来事。










「何やってんだテメエは」





右隣に座るのは啖呵を切って凄む蒼井翼氏。



皮肉にも"また"翼だ。



良し悪しはどうであれ毎回絶妙なタイミングで何かしら仕掛ける。勿論いまは良いタイミング。





「それはこっちの台詞だぜ。邪魔すんなっつ〜の。オメーのほうがKYじゃねえの?すっげ〜良い雰囲気だったのわかんねえ?」

「ハッ良い雰囲気どころか空気澱んでんのに気づけよバーカ」

「なになに〜?ほんとは羨ましいんじゃねえの〜?これだから嫉妬深い男は嫌んなるぜ」

「あ?」





正に一触即発。



本当に空気が澱んでいるのは"今"だと言う事に2人は気付いているのか不思議だ。



私を挟んで遣り取りをする2人。睨み合いが凄まじい。せめて私を挟んでしないで欲しい。ああっ!私が退けばいいのか!善は急げ。いそいそ癒し系な涙君の傍に避難しようとすれば―――――…





「あ、あれ〜?」





2人が私の両腕を掴んで離さない。ソファーから立ち上がろうとした状態で掴まれたため変な身体の姿勢。腰を上げたまま止まる。





「テメエどこ行くつもりだ」

「油断も隙もねえじゃねえの」





お互いを睨んでいた筈なのに、いの間にか私を睨んで来る。無言で避難しようとした私をあからさま蔑む2人。ワタシ?私が悪いの?それは可笑しい!被害者なのに!言い掛かりはよしてくれ!





はは、あはははは、





はあ…





「ほんと何なのアンタ達…」





もう空笑いと溜め息しか出てこないんですけど。
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