こうして僕らは、夢を見る





「でも硬式テニスなら少しだけしたコトある。」

「軟式は?」

「ないよ。」





翼の問いに今度こそ横に首を振る。



"した"と言っても硬式テニスもお遊び程度。高校時代に友人が硬式テニス部に所属していたから良くテニスラケットを借りて打ち合っていたぐらい。本格的に試合をしたコトもないしルールを辛うじて覚えてるだけ。



だから本当にかじった程度。





―――――――なのに。





「なら軟式も出来るんじゃねえの?」





翼が嫌な提案をしてきた。





「おね〜さん、暇?暇だよな〜?ほら。やってみろよ。」





私にグイグイとラケットを押し付けてくる籃君。



い、いやいや。



何ですか、その決めつけは。確かに暇ですけど。モノ凄く暇ですけども。私には今すぐ家に帰って寝ると云う使命がある。



だからテニスは遣らないよ。それにまず顔が近い!ラケット渡すだけなのに顔が近すぎる!心臓が爆発寸前なんですけど!



ラケットを押し返して後退りする私に涙君が言った。





「……やろ?」

「うっ!」





なななななッ何ですかこの可愛い生き物は!





「然程軟式も硬式も変わらねえだろ。」

「いやいや!変わるよ!軟式はダブルスでしょ!」

「なら人数的に丁度いい。」





翼の言葉に反論すれば朔君があっさり打ち消した。



へ?何で――――‥



あ。



よく見れば5人。


籃君・翼・涙君・朔君・楓君。ソフトテニスはダブルスだから5人だと1人余るんだ。



いやいや。良く考えてみれば君達始めっから5人だったからじゃん!今更でしょ!?端から5人でローテーションにテニスするつもりでココに来たんだよね?なら私は必要ない。



そう内心呟きまくる私の耳に翼の声が耳に入る。





「‘アイツ’未だ来てないしな」




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