こうして僕らは、夢を見る
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「ディ、ディカプリオ…っ!何だコイツ!裏切ったんじゃなかったのかよ!?何で助けに来たんだ!おい師範!どうなってんだ!」
「いいか?翼。ディカプリオは裏切り者じゃない。街を救うために罪を被り街を救うために戻って来たんだ!自らの命を引き換えにしてまで故郷を守りたい一心で!」
「な、なんだと………っ!?」
「うわ〜。マジやべ〜展開になって来たじゃねえの。ディカプリオ超イカす。滅茶苦茶イカす。心奪われちまったぜ。嵌まるわ〜」
「……これ好き。ディカプリオのほうが好き、かも」
「早く齣を進めろ師範。早くしろ。早く。早く。早く。気になって仕方がない。早くしろ」
「うっせえ!わかったから離せ!朔こえーんだよ!」
数時間。TVに群がり涙する男達。齣を進めているのは師範。いつの間に楓君は師範呼び。なら楓君の師範の私は長老?楓君より知識が豊富な自信はある。
分かるよ!君たちの涙の理由は!ディカプリオは裏切り者じゃ無かったと知ったときは私も泣いた!兄であるディスペンダを助けるために命を絶つ姿は正しく白銀!雪のように儚く吹雪のように強か!したたかな姿に私は惚れた…っ!
まだディスペンダ氏は出てこないから後半は涙の嵐だよ諸君。せいぜい美しい兄弟愛と誇り高き孤高の白銀に涙しろ!
横目でチラチラとTVを盗み見るたびに私も泣けてくる。男がTVに群がり涙するのも不気味だね。だけどSIDEストーリーでしか知ることの出来ない裏話っ!
「うう……っ」
「大丈夫ですか?」
「うん……」
ディカプリオの行く末を知っている私はTVから目を逸らし涙ぐむ。哀しみに暮れる私を見て司くんは苦笑い。正直大丈夫じゃない。なんて命は儚いのっ!気高い白銀は私は心を浚われた。いっそ身も心も浚って下さい白銀さま。
私の頭を撫でてくれる司くん。
「ディカプリオ様がディスペンダ氏を救ったように司くんもお兄様を助けて死んじゃ嫌だよ」
「死にませんよ。戦闘民族じゃないんですから」
それもそうか。
すんなり納得。リアル戦闘民族ならシュミレーションゲームになっちゃう!リアル体感RPGだよ。即座に私は平凡な百姓を選択する。ディカプリオ様みたいに雪崩興せないしディスペンダ氏のように諸刃の剣で岩壁を真っ二つに出来ないもん。