こうして僕らは、夢を見る
翼の言葉に私は首を傾げた。
首を傾げた際に、髪から伝う汗が肩を濡らした。Tシャツに張り付いた汗が気持ち悪い。
「アイツ?」
だけど今は汗より翼の言葉が気になって仕方がない。
"アイツ"って誰の事?
まだココに誰かが来るの?
そう悩む私に翼はニヤッと意味深な笑みを浮かべて私に言った。
「俺達の部長様。」
ブチョウ………?
「男子ソフトテニス部の?」
「お〜。部長様は忙しい奴だから未だ来てね〜の。」
「―………ふうん。」
籃君の言葉に適当に頷いた。
きっと鬼みたいな人だろうな。
私の世代の男子ソフトテニス部の部長のアダ名は【ゴリラ】本当にゴリラみたいな生徒。だけどその実力は本物。凄く強かったのを覚えている。人望も厚く部長にピッタリの生徒だった。
だから少年達や多くいる部員を束ねる現部長も高らかにウホウホと叫ぶ【ゴリラ】に違いない。
現部長を推測し「ふむふむ」と頷く私に翼は言う。
「お前が'アイツ'を見たら度肝抜かしそうだな。」
「ゴリラだから?」
「チゲえよ。何で部長がゴリラなんだよ。ゴリラがテニスしてたらビビるわ。」
未だ見ぬ部長をゴリラと言う私に呆れる翼。
あくまで想像上の話なんだから別に良いじゃん。そんなに【部長】はゴリラとかけ離れてるの?呆れ果てる翼の代わりに嫌味ったらしく楓君が教えてくれた。
「司(つかさ)はテメエみてえなブスより数倍綺麗なんだよ。」
へえ〜……
ってオイオイ。
いまのは聞き捨てならねえな。
女より綺麗な部長ってどんだけだよ。まあ私なんかより綺麗な人はごまんと居るだろうけど男の子に負けるのは嫌だな。
それにしても。
「部長を尊敬してるの?」
楓君が部長である司(つかさ)くんの名前を出したとき目が微かに輝いていた。尊敬してるのかな?と私は思った。