こうして僕らは、夢を見る











「ふふ〜ん。クルクル〜。あ!海老アボカド発見!司くん取って!お寿司が逃げちゃう!確保確保!直ちにお寿司捕獲命令を発動!」

「どうぞ」

「やったー!有難う!任務完了!ご苦労様!」

「まだ食べるんですか?」

「えっ何で!?」

「いや…意外って言うか」

「まだ15皿くらいしか食べてないよ?主にエビ辺りしか食べてないの。まだ食べれる!妊婦さんはよく食べるんだから!」

「妊婦じゃないですけどね」





右隣で呟かれた言葉が耳に入る事はなかった。



醤油をつけてまた海老アボカドを食べる。“もぐもぐ。もぐもぐ”と動く口。先程からずっと。来店してから忙しなく動いている。お寿司を食べるために。



ビントロ・甘えび・ねぎまぐろ・マグロ・はまち・イカ・鉄火巻・いったい何れだけ食べたのやら。正直自分でも覚えていない。





「回転寿司とか何年ぶりだろ〜…」




カウンターに肘をつきながら流れる行くお寿司達を見つめる。これで1貫105円(税込)って安い。奥さま達の家計簿は助かるね。



プラネタリウムを出てから大型の全国チェーン店の回転寿司に来ている。久しぶりの握り寿司が旨くて手が止まらない。そういう今も定番のマグロをリピート中。





「…俺も」

「涙君も?やっぱりそうだよね。滅多に寿司は食べに来ないし。頻繁に食べに来るひとなんて居ないんじゃないかな?」

「…司なら良く来る」

「え、司くんが?」





カウンターには涙君・私・司くん。涙君に言われた私は真意を確かめるため司くんを見る。





「よく来ます。ここじゃないですけどね。頻繁に来るのは母が寿司好きなだけです」

「お母さんが?へえ――…司くんのお母さんなら綺麗だと思うな。いまさらだけど司くんってハーフなんだっけ?」

「本当に今更ですね。そうですよ。母が外国の血が通ってますから。弟は父似ですが俺は母似。結構向こうの血が濃いと思います」

「だよね〜。綺麗な目の色と髪の色してるもん。海と太陽って感じ。1度見たら忘れられないよ」

「忘れてますけどね」

「え?」

「いえ。何でもないです」





顔を逸らして誤魔化される。何かを言ったような気がしたのに聞き取れなかった。視線で訴えても蒼い瞳は一向にこちらを向かない。諦めた私は司くんから視線を反らし、寿司を移す





「あああ!北欧アトランティックオニオンサーモン!?なんともデンジャラスな名前!」





取らない手筈はない!そう意気込みを入れるとバッと皿を取る。何だか皿を取るのが快感になって来た。横には山積みになる皿。一体この記録が何れ程伸びるのやら。
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