こうして僕らは、夢を見る




「皆と出逢う前は誰かとこうして外食することもなかったよ。でも高校生のときは良く買い食いしてたな〜。学校の帰りに光陽近くのコロッケ屋さんとか」

「…藤田コロッケ?」

「そうそう。あそこコロッケ1つ50円なんだよね!私の一押しは南瓜コロッケ!あれは美味しい!―――…って何で藤田コロッケを涙君が知ってんの!?」

「光陽高校の近くの藤田コロッケならまだ有りますから」

「司くんも知ってるんだ〜!あの店まだ潰れてなかったんだね。経営困難とか言ってたし。昔ながらの店で結構気に入ってるんだ〜」

「翼と籃がよく行きますよ」

「あ〜…何かそんな感じがする」





屯して藤田コロッケのお婆ちゃんとお爺ちゃんを困らせてそう。藤田コロッケのご夫婦は優しいからね!きっと人柄が良いからコロッケも美味しいんだ。1番の調味料は愛情とか言ってたもん。買い手の気持ちを理解してるね。流石だ藤田コロッケ。まだ潰れてなかった事が凄く嬉しい。



ここら辺の街並みも大分変化した。ガラリと住む人も変わったし。若者が多くなったように見える。



お年寄りが住みにくい街に成ったんじゃないかな?騒音とか。でも高齢者向け施設とかサービスも増えた。バリアフリーも。どちらが良いのかは解らない。歳を取ると長閑で自然豊かな田舎に移り住む人が多いから此所に若者が密集する。



光陽高校も変わってたし。あれは吃驚した。変わるどころか別物みたいだったもん。生徒もイケイケな子が多かった。眼鏡に御下げとか普通に居たのに。今の光陽高校は洒落てる。





「司くんと涙君は学校エンジョイしてる?今の光陽高校には可愛い女の子が沢山居るでしょ!?誰か良い雰囲気になってる女の子とか居ないの!?」





つくづく私は桜子の友達だと思う。【THE★お節介】の炸裂だ。恋ばなは女の子が好きなの。噂話とか。今の私は目が煌めいてると思う。【恋のCUPID】に成ろうとしているから。





「そんなの居ません。まず要らない。邪魔なだけ。煩いし」

「…うん」

「またまたー!先生も綺麗な人が多いもん!イングリッシュティーチャーはグラマーな外国人の先生だったよ!?生徒悩殺寸前だったもん!あと科学も可愛らしい先生だったし!少しミスが目立つけどそこがまた可愛いんだよ!」

「蕾さんに比べれば蚤ですよ」

「の、のみ……」





ど、どう反応すればいいんだろうか。



箸を口に加えたまま固まった。



司くんは眼科に行った方がいい!学校に勉強しに行くだけなのにお洒落する女子力の高いJK。それに比べて今の私なんかTシャツにジーンズと言う普通の格好。地味な私と小綺麗なJK。どっちが蚤なのかは一目瞭然。だけどJKが蚤だと言う司くん。君は眼科に行きなさい。視力が著しく低下しているよ。



カウンターでオロオロする私を尻目に、騒がしいテーブル組の声が一際大きくなった。






「……っ!?」

「くはははは!やべ〜。最恐〜。因みに山葵大量に入れたのは俺〜。悪いね〜?蒼井君。仕返しだ。自業自得じゃねえの」

「ドンマイだ、翼。これも宿命。吐くなよ」

「せ、セーフ。翼の選ぶところだった。命拾いしたぜ」

「……っお、ぼ、えて、ろっ」





口許を抑えて3人を睨み付ける翼。大量の山葵が入った寿司を食べたのか鼻と口許を抑えて涙目。絶対山葵ってツーンってするよね?会話からすると入れたのは籃君らしい。





「あの子等まだ遣ってるの?寿司でロシアンルーレット。下らない。よく飽きないね?不味いだけなのに。寿司くらい普通に食え」

「馬鹿ですから」

「…馬鹿だし」

「うん。馬鹿だもんね」





全員一致の回答。



カウンターに座る私達は避難組。テーブルに座っているのはただの馬鹿。ロシアンルーレットなんて回転寿司を冒涜するようなことをしている。それも真剣に。本当に馬鹿だろ?あいつ等。
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