こうして僕らは、夢を見る





「涙君はオレンジのシャーベット?」

「…うん」

「うわぁ、」





私の今のは何の吐息か。美味しそうなシャーベットか不意に無表情な涙君が微笑したからか。きっと後者だけど。討論会組のしつこさと暑苦しさに疲労困憊な私は涙君が天使に見えた。





「私も食べようーっと」

「は?腹が膨れたとか胃薬がどうとか嘆いてたじゃねえか」

「…別腹」

「涙君正解!甘いものは別腹よ!だからと言って寿司にチョコレートケーキは要らない。あれは2度と食べないもん。口直しのためのアイスクリームなの!」

「お前いっぺん体重計乗れば?」

「さりげなく肥ってるって言ってるよね?私が1番気にしてる事に触れないでおくれ」





ケーキバイキングで3㌔増量していた事がまだ忘れられないんだから!でも食べ物の欲には敵わない。好きなときに好きな物を食べ物を食べなきゃ人生損するよ。いちいち体重に振り回される人生なんか遠慮しておくよ。それに大丈夫。少量のものを選ぶ。口直し程度だもん。軽め軽め……





「白玉善哉和風クレープ下さい」

「ガッツリじゃねえか」





くそ……っ!



誘惑に負けてしまった。兄ちゃんが「あいよ!」と言いクレープの生地を作り始める。頼んだものは仕方ないと諦める。



財布からお金を取り出そうとしたとき―――‥ジャラ





「……え」





スッと横から伸びてきた手。



私がお金を置こうとした場所には小銭が置かれた。それもクレープ代。



置いた人物を見れば、まさかの涙君だった。





「る、涙君?いいよ?私は自分で払えるから。寧ろ私が奢る側だよ。気持ちだけ受け取っておく」

「………」

「涙君?オーイ」

「馬鹿。女に奢らす奴が何処に居るんだよ。気持ちを汲むなら素直に涙に奢って貰え」

「………お、おお?いきなり恋愛上級者的なこと言うなんてどうしたの?吃驚したよ」




そう言うと楓君は顔を茹で蛸にしてギャーギャー騒ぐ。恋愛上級者に引っ掛かったらしい。



ただ楓君が場の空気を読める子なだけだと言う事くらい知ってるよ。今回KYなのは私だ。KYB。空気読めない豚。自分で言ってて悲しくなるよ。





「…涙君、あのさ、」

「………」

「うん。えーっと」

「………」

「―……ありが、と」

「……ん」





ぎこちなく言えば素っ気なく頷かれた。涙君らしい。態度はつれないけど頬が綻んでるところを見ると満足らしい。私が有難うだよ!
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