こうして僕らは、夢を見る
そしてずっと引っ掛かっていた事を聞く。
初めて出逢ったときから、ずっと。あの石段で擦れ違ったときから気になっていた事が合った。
「病院で走ってたよね?」
勢いよく過る金髪。
印象深い学ランに金髪の少年。
いま思えばそのときの少年はどう考えても司くん。病院で擦れ違ったときの光景が印象深くて石段で思い出された。
「玲音が退院する日だったので走ってたんですよ」
「やっぱり私達遭ってたんだ」
ずっと司くんを見たことがあると思っていたから。司くんと玲音くんは似ている。今まで気づかなかったのが不思議なくらいに。病院で擦れ違ったときに浮上したのは玲音くんの顔だ。漸く心の痼りがストンと落ちるに消えた。
「俺はその前から蕾さんのことは見ていましたけど」
「え?」
「擦れ違ったとき、蕾さんを横目で見たのは俺が貴女の事を知っていたからです」
車椅子に乗る私と廊下を走る司くん。やっぱり目が合っていたのは杞憂ではないらしい。
リハビリのときから盗み見していた司くんは私を知っていたけど私は司くんを知らなかった。
こうして数年後出逢えたのが何かの巡り合わせみたいだ。
「ずっと見ていましたから」
電車が通り過ぎた踏み切りは静か。
音も風も止んでいる。
「いま思えば一目惚れ――――――――だったのかもしれません」
ハニーブラウン色をした髪が愛しげに掬われる。内心私は戸惑っている。本気の眼差しだったから。今までそれとなく言われてきたけど、あまり本気とは捉えていなかった。だけど本気。今は本気だ。
「一目惚れ、」
「それも数年前からです」
「はは、じょーだん、」
「―…冗談?」
空笑いを浮かべ冗談止めてよと言おうとすれば眉を顰めた。私を半ば睨み付けるように見る。穏和な司くんらしくない表情。そして物腰柔らかな声色も地を這うような声色に変わっていた。
「俺は本気で蕾が好きだ」