こうして僕らは、夢を見る
<走れ>無理だよ
<走れ>もう走れない
<走れ>駄目なの
≪走れ≫
―…走れるコトなら走りたい。
いつからか、青は見なくなった
見れなくなったから
青はもう――――――届かない
ギュッと目を固く閉じて叶わない願いを否定する。思い出さない為に溢れそうな願望を蓋をする。まさか楓君の一言で此処まで揺らされてしまうなんて予想外だった。
私も、まだまだなぁ。
やっぱりまだ青いなぁ。
もっと成長しなくちゃ。
そう改め直す私の行動を不審に思ったのか、異変に思ったのか、心配してくれたのか、それとも周りに責められた反省したのか、
楓君は少し狼狽えながら肩に手を伸ばしてくる。
「お、おい、」
落ち着いてきた心拍。
耳に入ってきた楓君の言葉を聞きソッと胸元から手を離すと顰めていた顔を笑顔に切り替え―――――――勢いよく顔を上げた。
「はいっ!」
肩に伸ばされた楓君の手には無理矢理コンビニの袋を手渡した。中には買い置きしようとコンビニで購入した大量のアイス。
咄嗟の判断で受け取ってしまった楓君はコンビニ袋と私を訝しい眼差しで交互に見つめる。
「それ、あげる。」
楓君に持たせた袋越しのアイスを指差して言うと、背中を向ける。しかし言い残す事を思い出した私は再度少年達の方に振り返った。
振り向けば未だ少年達はポカーンと間抜け面を晒し突っ立っていた。
顔を顰め胸元を押さえていた私がいきなり笑顔になった。けど即座に楓君に袋を手渡して今は帰ろうとしている。この一連の出来事に着いてこれて居ないみたいだ。
そんな少年達を微笑ましく思いながらも私は何かを振り切るように飛び切りの笑顔を見せた。
それは今日一番の満面の笑み。
「テニス、頑張りなよ!」
そう言い残して私は駆け出した。後ろから素早く我に返った少年達の声も振り切り、私は―――――――――――逃げた。