こうして僕らは、夢を見る
登ってきた階段を2段抜かしで走る。後方から聞こえる言葉には耳を傾けず、ただがむしゃらに少年達から逃げた。眩しすぎる彼等は私の目には毒だった。
来るときは苦だった石段も、今は楽でひたすら駆け降りる。しかし――――――――――少年達の事はもう頭の片隅に置き去りにされていた。
今は、
この風が気持ちよかった。
走れない。
だけど、私はいま走っている。
――――――やっぱりこの瞬間が一番好きだ。
だけど同時に。
『どうでもいい』とか『関係ない』とか『昔のこと』とか。
幾ら私が無理矢理忘れようとしようが無理矢理思いを切り捨てようとしても、
やっぱり。
私はこの瞬間が一番好きなんだと改めて叩き付けられる。
―――――――‥ッドンッ!
「――……っ!」
考えながら石段を駆け下りていると確りと前を見ていなかった私は石段を登ってきた人と肩がぶつかってしまった。
「す、すみません!」
すれ違いながら打つかってしまった人に謝ると、その人も素早く謝罪の言葉を述べた。
自然とその人に向かう瞳。
その人の瞳も私に向かう。
―――――――――――同時に合わさる瞳――――……
「――……あ」
私を見ると見開かれたその人の綺麗な瞳。それと同時に微かに零れた小さな声。私に何を言い掛けた〔少年〕の言葉を最後まで聞く事は無く私は階段を駆け下りた。
本当に一瞬。
一瞬だけ眼が合っただけ。
私は謝ると素早く駆けて行ったがその少年が私の後ろ姿をずっと眺めていた事を、
私は知る由もなかった。