こうして僕らは、夢を見る










――――――――――
―――――‥



石段から道路に出ると、そのまま私は走り続けた。



脳裏には先ほどの少年が浮かび上がっている。





何処かで見たことがあるような―――……?



打つかってしまったときに不意に浮かび上がった些細な疑問。初対面の筈だけど何故かそう思った。



金髪蒼眼の美少年。きっとハーフなんだろう。あれほど綺麗な子、1度会ったら忘れる筈がない。見たことがあるなんてきっと私の思い違いだ。



肩には大きいテニスバックが背負われていた。そして光陽の制服。



あの美少年は多分“部長”。楓君が話していた“綺麗な司くん”。不覚ながら納得だ。あの美少年はそこらへんに居る女の子よりも遥かに綺麗な子だったから。男にして置くのには勿体ないくらいに。



どこか儚げで、気高さが見える。英国紳士みたいな。英国王子にも見えなくもない。









――――――――走りながら美少年を思い出してると。





――……ッドクン……!



再度荒々しく脈を打つ。しかし、先ほどとは違う理由で。脈を打つ胸元を押さえて立ち止まる。





「……っはあ、っひ、」





く、くるしっ



息切れが止まらない。



足がガクガクと震え砕けそうになり近くのフェンスに手を掛けた。


ガシャンッ!――――雑にフェンスを掴めば大きな音が鳴る。



それさえ気にもせずフェンスに掴まったまま踞った。










地面に膝をつき肩で息をする私はまさに滑稽。



汗に塗れながらも輝いていたあの頃の面影はない。淀んだ瞳と心だけが私を掻き乱す。



膝に手をつき立ち上がると重い足を引き摺るようにして歩き出す。走るのではなく――――――――――――歩いた。





「………っ、」





歩く事すら辛い。



調子に乗りすぎた。



全力で走ったことを今になって後悔しても後の祭。



後遺症で著しい体力の低下。長時間の運動は困難。そして走る事で伴う身体への大きな負担になり影響を及ぼしてしまう。



普通に運動する事さえままなら無くなった私は、





――――――2度と青を見ることを余儀なくされた。





走ることを私の生き甲斐で青を体感するのは私の生きている証。青を奪われた私の世界はもう息をしていない。





息を吹き返すことは、

2度とない。





私が善かれと思って取った行動の代償は計り知れない程大きかった――――……
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