こうして僕らは、夢を見る
走るたびに足が鉛のように重くなり風にはなれない。然れど――――――たった数秒。数秒間だけ走るときが私の自由なんだ。
そのあとの負担は大きいけど。
今のように。
まだ階段だっただけマシだ。
登り坂で走るなんてそれこそ自殺行為だけど。降りるだけだったからまだ良かった。だけど調子に乗りすぎた。足が重いし息がしにくい。
疲れた。早く帰って寝たい。
アイスも無いし何しに行ったのか分からないな、ほんと。
「ソフトテニス、か。」
楓君に渡したアイスを思い出すと自然とテニスコートに居た5人と"部長らしき美少年"がモヤモヤと頭の中で湯煙のように浮かび上がった。
テニスコートはもう見えない。
だけどそのテニスコートは私の頭から焼き付いて離れない。
「青春だなぁ……」
ゆっくり歩きながら呟いた。
私のときの光陽のソフトテニス部も強かった。みんな楽しそうに部活をしていたよね。他も然り。
確か私はそれを羨ましそうに見つめてたっけ?
だけど近づきはしなかった。
普通科に行くと友達もガラリと変わった。私が体育科の友達と距離を置き始めたからだ。
陸上部の部室にも行かなかった。込み上げるものが在りすぎて自分が惨めに思えて仕方がなかったから。お前の居場所は此処にはない――――――そう言われるのが、怖かったのかもしれない。
私は進みたかった。前に、進みたかった。無い物ねだりより現実を見据えようとした。部室から遠ざかる事で無理矢理切り捨てようとした。荒治療のようなものだ。
それが今となっては善い事か悪い事なのかは未だに分からないが。―――――‥私が心身共に成長したら光陽に行こうとは決めているけど、まだまだ先の話だ。