こうして僕らは、夢を見る










「った!」

「誰が性悪男だチビ。」





不意に青いベンチに座る私の頭を小突いたのは性悪男―――――――――――翼だ。昨日知り合ったテニス少年の1人。いつの間にかコートから抜け出していたらしい。現在翼の抜けたテニスコートには昨日知り合った他の4人が乱打している。



楽しそうだなあ…



少しの間私は四人を眺めると視線を翼に移した。翼は肩にラケットを掛けて私と美少年の前に突っ立っている。相変わらず偉そうだなコイツ。きっと世界は俺様を中心に回っている思考な奴だ。本当に高校生なのか調査したいところ。まぁ個性が合っていいけど有りすぎるのも問題だよね。自己主張が強すぎる。翼に限らず濃い面子が揃ってるし。





「変なこと入れ知恵してんじゃねえよ司。」

「ふふ。何のことかな?」

「チッ。清ました顔してとんだ性悪野郎だぜ。」





お前もな。



そう言いたいがまた昨日のように頬をつねられるのは避けたいから口には出さない。



あ。そうだ。





「ほれ翼。お疲れ様で〜す。」





私はコンビニ袋からスポーツドリンクを取り出して翼に差し出す。





「………」

「翼?」





しかし翼はドリンクを受け取ろうとしない。若干固まっているようにも見える。



まさか……勘弁して頂戴よ兄ちゃん。私から手渡されたドリンクなんて要らねえよ的な感じ?私が触れた事で汚染されたとか言われたら軽くショックなんだけど。



おいおい。暑いなかスポーツするのは体力的に大変だと思って此方も暑いなか汗水垂らしてコンビニまで買いに行ったんだぞ。



少し不満な気持ちを抱き不貞腐れながら再度翼の名前を呼んだ。






「あ……わりい。」




しかし私の予想とは裏腹にいともあっさりとドリンクを受け取る翼。呼ばれたのに気が付きハッと我に返った。態勢を立て直すも若干罰の悪そう顔をしている。



その翼の不可解な様子に私は怪訝な面持ちで首を傾げた。
< 39 / 292 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop