こうして僕らは、夢を見る
「私に君たちのマネージャーは務まらないよ。それに私は君達からすれば歳食ってるオバチャンだからね。体力的に無理かな……」
「確か蕾さんは21歳ですよね?全然若いじゃないですか。それに童顔ですから未だ未だ高校生でも充分いけますよ。」
「………ありがとう?」
誉めてるのか、貶してるのか、
よく分からない言葉を司くんから貰ってしまい疑問符がついたお礼を言う。
それは童顔って事?チビって事?―…うぬぬ。よく分からん。でも制服を着たらコスプレになる事には変わりない。制服を着た途端に浮かれてJK気分を味わっているとき知り合いと遭遇してみなよ?指差されて爆笑される事は間違いない。きっと一生笑い者になるんだろうね。
「翼が固まってたぐらいですから。きっと蕾さんの可愛らしいマネージャー姿を想像したんですよ。」
「寝言は寝て言え。チビがマネージャーとか地獄の練習メニューよりえげつない地獄だっつーの。」
「ほんと素直じゃないよねお前。スポドリ渡す蕾さんの動作に見とれてた癖に。」
「そりゃあテメーの方だろうが。」
「は?俺?見とれてたけど?それが何か?純粋に可愛いと思ったけど文句あんの?」
「開き直んのかよ。」
「ムッツリスケベだけには言われたくないね。」
「ああん?んだとテメェ」
目の前で成される会話。
余りにも早口過ぎて付いていけないがどちらも辛口。でも悪い顔ではないかな?確かに翼は司くんを鬼の形相で睨んでいるし司くんは翼くんを見下したような笑みを浮かべている―――――いやいや。どっちも悪い顔だった。見るからに悪徳商人面してるじゃん。どこが悪どい顔じゃないんだよ。
顔は兎も角。良い意味で生き生きしてる。信頼関係が成されているのが肌で感じられる。
自然で極普通。
私の前では柔らかい物腰の司くんも翼の前だと砕けたように意地悪になっている。それに翼が突っ込まないところを見る限りこれが2人の普段通りだと言うこと。
大人びたテニス少年も何だかんだ高校生。
2人の高校生らしい一面を見れて微笑ましくなった。自然と綻びる顔を隠す為に缶ジュースを飲む。しかし吊り上がる口元を完全に隠せていない。
「おい。何ニヤニヤしてんだよ。」
「っんな!」
何だとコノヤロウ!
どこがニヤニヤだよ!明らかに微笑ましい我が子の成長を見つめる親の姿でしょうが!純情で可憐な乙女(21)を変態扱いしないでよ!
――…ッて。
「楓君?」
横から掛けられた失礼な言葉。そちらに目を向ければ昨日と変わらず目付きの悪い赤茶の髪の毛。やっぱり黙ってると超怖いけど中身を知っているからヘコたれない。―――――――青いベンチに座り司くんと翼を眺める私の傍には照れ屋なワンコ・楓君が居た。