こうして僕らは、夢を見る
私と目が合うと即座に外方を向き目を逸らされた。もしかして照れてるのかな?と微笑ましくなるがあからさますぎる楓君に若干心に傷を負った。
――ズーン――…と不のオーラを背負いながら凹む私に追い討ちを掛けるてくるように楓君は猛攻撃を仕掛けてくる。
ツンデレ加減も程々にして欲しいと思った。お姉さんの頑丈な心が脆く崩れ去るよ。寧ろツンデレだと信じたい。本音ならそれこそ私は灰になる。
「気安く呼んでんじゃねえよブス――――いってえ!」
私に悪態をつく楓君の耳が不意に引っ張られて楓君は薄らと瞳に涙を浮かべた。眉を寄せる楓君の姿が威力の強さを物語る。
なっ、何が起こった……ッ!?
あたふたする私は楓君の耳を引っ張ている手を見ると順に――――――腕――――肩――――そして――――顔を目に留めた。
「つ、司くん?」
涙を浮かべている楓君の耳を容赦なく引っ張っているのは黒いオーラを纏う司くんだった。
私の呟きが聞こえていないのか、聞こえていたのかは定かではないけど呼び掛けには応じず楓君に話し掛ける。脅すような声に楓君の顔は青白い。もしかすると私の顔色も悪いかもしれない。
「楓?」
「な、何だよ。」
「蕾さんに何て口の利き方してんだ。ああ?お前は何様だよ。ツンデレも良いけどデレを見せろ。」
「わ、分かった。」
いまので分かったの!?
従順に司くんに従い頷く楓君に私は疑いの眼差しを打つけた。そこで納得していいの!?と思ったけど私は瞬時に理解する。
きっと楓君はツンデレの『デレ』は理解した訳ではないが司くんから発せられる凄まじいオーラに叶わず頷いただけなんだと。どんな恐怖政治してんの司氏よ。
「司怖ッ。」
他人事のように翼がポツリと呟いた。お前人の言えねえよ。私からすればその怖い司と先程言い合っていた翼もある意味怖いわ。
まだ司くんが楓君に何か言っている。それに素直に頷く楓君。何とも異様な光景だ。誰も何も言わないとすると「これが普通?」と私は首を傾げた。
これが普通なら司くん最強伝説だ。司くんの第1印象からは想像が付かない武勇伝の数々。寧ろ最強より最恐かもしれない。
そしてふと気がつく。
―…ん?
不意に引っ張られ服の裾に私は首を傾げた。
一体今度は何だ。と不思議に思ったが昨日も数回服の裾を引っ張っていた事を思い出す。しかもそれは同一人物の仕業。マイエンジェルの可愛い仕草だった。司くんのように偽エンジェルではなく正真正銘の天からの使者。
横に目を向ければ。
「お疲れ、涙君。」
―…やっぱり。どうやら私の勘は当たったみたいだ。服の裾を引っ張っている少年に私はニコッと笑みを見せる。先程からテニスをしていた涙君がラケットを手にしたまま傍に立っていた。