こうして僕らは、夢を見る
「そりゃあ、あんな形(なり)でも部長だからな。」
いつの間にか私の隣で偉そうに脚を組みながら座っていた翼。籃君とは逆隣を陣取る。
翼は楓君と打ち合う司くんを見つめてそう言った。コートを見つめる眼差しは真剣そのもの。
それだけで司くんが何れだけ実力のあるテニスプレーヤーだと云うことが分かる。
―…場違い、かも。
そんな下らない事をコートを見つめながら思う。だってさあ?眩しいんだよね2人とも。何かキラキラしてる。少なくとも私の目にはそう映っている。美化させているだけかもしれないけど目を逸らしたくなるほど眩い。
テニスコートからこのベンチまでは遠くもないが近くもない距離。だけど私には隔てる透明の壁が在るように見える。
見えない透明の壁の向こう側で絶え間無く彼等は打ち合っている。おおよそ70%ぐらいの力だと打ち合いながら話している。これで70%だと100%の力を見るのに少し気後れしてしまう。
「楓?威力落ちてるよ。」
「―……ッ、化けもんかテメーは!なんで息切れてねえんだよ!」
「ふふ。あまり俺を侮るな。」
「清ました顔しやがって。本気でやれ、よっ!」
「なら本気にさせてみなよ?」
「チッ―――…っぅらあ!」
――――バァーーン――…!
ひと際大きな音が響く。
……ポンッ……ポンッ……とボールは跳ねて司くん側のコートに落ちた。楓君が渾身の力を込めた一球が見事に決まった。
「ざまあみやがれ。」
ニィと笑った楓君。
夕焼けの染まったの赤茶の髪色が真っ赤に見えた。情熱の赤。意外と楓君は熱い男の子なのかも。満足気に笑った楓君が別人のようだ。こんな笑い方もするんだ……と私は楓君をボーッと見つめた。