こうして僕らは、夢を見る
「もうっ。」
不貞腐れる私に、僅かに肩を震わせている朔君。
メロドラマとか恋愛映画を見すぎている女の行く末は只の笑い者。正に私の事だ。痛い。痛すぎる。穴があったら入りたい。勝手に自惚れた結末がこれだ。どんな呑気な頭してんだよ。花畑じゃん。
未だに笑いが収まらない朔君は笑いを堪えている。ああッもう!笑いたいなら笑えばいいじゃん!
―…ッて。
「デジャブ……。」
小さく呟く。不意に思い出されたコトに目眩がした。数時間前。テニスコートに来た私はこういう風に司くんに笑われていた気がする。
そして今は朔君に笑われている。色んな意味で哀れすぎる自分。これからはもう少し考えて行動しようと胸に誓った。自嘲も必要だ。
私の小さな呟きが聞こえていたのか朔君が此方に視線を向けてきた。
「どうした?」
「……いや。何でもないよ。」
慌てて誤魔化すとテニスコートに視線を移した。探るような視線をぶつけられたが無視だ無視。私は意外と根に持つ派なんだから。
テニスコートではまだ司くんとの打ち合いについて講じていた。
「ならよ〜?一球ずつローテーションにしね〜?それなら平等に打てるしな。どうする?楓。」
「は?嫌だね。いつまでたっても終わらないし。」
「そうだな。まぁローテーションなら良いぜ?どうせ司が飽きるのも時間の問題だし。翼は?」
「残念。もう飽きてる。」
「構わねえよ。涙もそれでOKだよな?」
「……ちょっと。聞いてる?俺もう遣らないから。お前等だけで遣れよ。」
「うん。」
「………俺、蕾さんのところに戻るから。じゃあね。」
「さ〜遣ろうぜ。司くん?」
司くん抜きで進められている話。司くんが割って入っても虫けらの如く無視されている。完全無視されている光景が少し可哀想にも見えた。
司くんが輪から離れようすると、漸く話が纏まったのか籃君が司くんにボールを無理矢理手渡した。無理矢理押し付けられた司くんは機嫌を損ねたのかムッと不貞腐れている。